こんにちは。プラットフォーム開発部データ駆動推進チームのyagimaruです。2024年1月にピクシブにジョインし、現在は全社的なデータ活用支援に取り組んでいます。
この記事では、私が所属するデータ駆動推進チームの取り組みについて紹介させていただきます。
この記事が、社内でのデータ推進を検討している方や、データ活用文化の醸成に取り組みたい方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
データ駆動推進チームとは
データ駆動推進チームは、データ分析の専門部署ではなくデータ民主化を促進する部隊として、「社内メンバーの誰もがユーザーの価値を創出するためにデータ活用できるしくみをつくること」、「データにまつわること、データ活用などに関する全社的な相談窓口となること」をチームの役割として活動しています。
データ駆動推進チームとして社内のデータ活用状況を見直す取り組みを進める中で、各部署や個人が抱えるデータ活用の課題やニーズが見えにくいという問題に直面しました。この状況下では適切な支援やリソース配分が難しく、データ活用の効果を最大限に引き出せていないと感じていました。特に、部署によってデータ活用の成熟度や必要性が異なる中で、多様なニーズに応えるためには、より詳細な実態把握が必要だと考えました。
課題解消のために進めていったこと
そこで、これらの課題を解決し、今後の計画立案とニーズに合った支援を行うために、全社員を対象としたデータ活用実態調査に着手しました。
この調査では、まず全社員を対象としたアンケートを実施し、データ活用の現状や使用ツールに関する課題を把握することにしました。さらに、アンケートの結果を基に個別のヒアリングを行い、各部署や個人が抱える具体的なニーズや問題点を深掘りしていきました。
アンケート調査の結果
まず最初に行ったアンケート調査の結果は、以下のようになりました。
回答者属性について、エンジニア職とビジネス職がほぼ同じ割合となりました。当初はエンジニア職からの回答が多くなると予想していましたが、ビジネス職の方々からも多くの回答を得られたことは予想外でした。
「データ活用にどの程度関心がありますか」という設問では、全体の87%が「やや関心がある」または「大変関心がある」と回答しました。この傾向は職種を問わず一貫しており、全社的にデータ活用への関心が高いことが窺えました。
一方で、「どちらとも言えない」または「あまり関心がない」と回答した層もいましたが、この層の多くは、日常業務でデータを直接扱う機会が少ない部署に所属していることが分かりました。これらの部署では、データの価値は認識されているものの、日々の業務との直接的な関連性が低いため、データ活用への関心が限定的になっていると考えられます。
「データとデータ分析があなたの業務に与える影響はどの程度だと思いますか」という設問では、全体の75%の回答者が、データとデータ分析が業務に与える影響を「大きい」または「非常に大きい」と評価しており、多くの社員がデータに基づく業務成果や意思決定の必要性を強く認識していることが分かりました。
特筆すべき点として、エンジニア職よりもビジネス職の方が、データの影響度をより高く評価する傾向が見られました。この点から、ビジネス職の業務におけるデータ活用の重要性が高まっていることが窺えました。
一方で、「中程度」と回答した層も一定数存在しました。この要因として、データを業務改善や顧客対応に活用しているものの、必ずしも業務の中心的な要素とは捉えていない可能性があるのではないかと考えています。しかし、回答項目として用意してあった「わからない」と回答した人がいなかったことから、全社的に業務におけるデータの重要性は認識されていると考えています。
「自分または所属部署では、どの程度データを活用できていると思いますか」という設問では、予想通り「どちらともいえない」から「やや活用できている」の回答が多数を占めました。
この回答結果から、データ活用に関心があり前向きな姿勢を持っているにもかかわらず、多くの社員がまだ十分に活用できていないと感じていることが分かりました。 特にビジネス職において、この傾向が顕著でした。この背景には、データ分析スキルの不足、活用ノウハウの不足、そしてデータリテラシーの低さが要因としてあるのではないかと考えています。
「データ関連のスキルについて、必要性を感じているが自分に足りていないと感じているものを選択してください」という設問では、エンジニア職とビジネス職ともに、「データ分析(統計分析、仮説検証など)」「データリテラシー(データ理解と解釈、データに基づく意思決定)」に対するスキルが不足していると回答した人が多くいました。
さらに、ビジネス職においては、SQLやBIツールのスキル不足を感じている人が多いという結果が出ました。これは社内でLookerが広く使用されており、ビジネス職の方々もBIツールやSQLに触れる機会が多いことが一因だと考えています。
「過去1年間に社外のデータ関連のセミナーや勉強会に参加したことがありますか」という設問からは、社員のデータ活用に対する興味関心は高いものの、自発的にセミナーや勉強会に参加するまでには至っていないことが分かりました。一方で、実際に参加している社員は、データ活用に対する関心が非常に高く、最新のトレンドやツールについて積極的に学ぶ姿勢が見られました。
「勉強会、学習教材などがあれば利用してみたいですか」という設問からは、全体で67%の回答者が関心を示していることが分かりました。 学習への関心は高い傾向にあり、自発的にキャッチアップするほどではないものの、機会を提供すれば多くの人が利用してくれると確認できました。ただし、一定数の人が「時間がない」と回答しており、この層へのアプローチ方法が今後の課題となりそうです。
以上これらアンケートの結果から、データ活用への意識は全社的に高く、業務におけるデータの影響力についての理解も深いことが確認できました。
ピクシブでは、データ活用に関する一般的な認識が社内で広く共有されており、非常に良い傾向だと捉えています。一方で、予想していた通り日常業務でデータをあまり扱わない人の中には、データ活用への関心が薄れがちな傾向も見られました。
また、社内のデータに対する意識は高いものの、自発的に情報を求めて学ぼうとする姿勢はまだ少数派です。しかし、情報や機会が提供されると積極的に利用する姿勢が見られるため、適切なリソースとサポートがあれば、より多くの社員がデータ活用の実践に取り組む可能性が高いと考えました。
ヒアリングの実施
アンケートの結果を踏まえて行った個別ヒアリングでは、以下のような意見をいただきました。
- 「どこにどのデータがあるのか分からない」
- 「データに触れる機会は多いものの、数値の見方が分からない」
- 「ググっても出ないような、pixiv独自の知識を知る機会がほしい」
- 「データの抽出はできるが、データの深掘りや課題解決のための分析に課題を感じる」
- 「各種ツールを学ぶ環境が少ないと感じる」
など…
アンケート結果にも表れていましたが、社内でLookerやBigQueryの利用が浸透し、データに触れる機会は全社的に多いにもかかわらず、多くの社員がデータを十分に活用できていないと感じている印象を受けました。特にビジネス職は、データ活用に関するリテラシーに課題を感じる傾向が強く、データの収集はできても、それを次のアクションにつなげて活用することが難しいという意見もありました。
さらに、データ活用に関する悩みを抱えていても、チーム内にエンジニアがいないため、情報収集や相談の機会が限られている社員がいることも分かりました。
実態調査の結果を踏まえ行なったこと
これらの調査結果を踏まえ、まず着手したのが「データ活用お悩み相談室」の設置です。
従来、相談窓口は存在していましたが、気軽に相談するにはハードルが高いという声がありました。また、データ活用に関する基本的な疑問—「何から始めればいいのか」「KPIをどう設定すべきか」「どんな分析手法を使うべきか」など—を気軽に相談できる場所がないという課題も実態調査から浮き彫りになったため、データ活用全般について相談できる新たな窓口を設置することにしました。設置後からは徐々に利用が増え、現在は漠然とした相談も寄せられるようになりました。
次に、「そだてるデータ活用の森」をリリースしました。これは、データ活用に関するリテラシーやツールを学ぶ環境を提供するために整備したものです。
以前から「データ分析ポータル」という、データ分析に関わる全社員向けの情報集約ポータルは存在していました。しかし、実態調査で明らかになった課題を解決するには情報が不十分であったため、ニーズの高い情報を中心にコンテンツを見直し、デザインも大幅に刷新。新たに「そだてるデータ活用の森」として再展開しました。
「そだてるデータ活用の森」は、知識の苗を育て、みんなでデータ活用の森というひとつのポータルを育てていきたいというコンセプトで作成しています。そのため、リリースで終わりではなく、今後も継続的にコンテンツを追加し、ポータルを拡充させていく予定です。
今後の展望
「そだてるデータ活用の森」という支援のハブを整備できたため、今後はその内容を充実させつつ、個別の支援活動も強化していく予定です。
具体的には、データ利活用の人材育成として、主にビジネス職をターゲットとした初学者向けの支援を考えています。個々人のスキルアップを通じて、自発的なデータ活用の文化を醸成することを目指しています。
さらに、「アナリストコミュニティ」の立ち上げを計画しています。このコミュニティでは、部署の垣根を越えてアナリスト同士のつながりを強化し、社内の活用事例を共有することで、組織全体のデータ活用をさらに活性化させたいと考えています。
おわりに
この記事では、データ駆動推進チームの取り組みについて紹介しました。
ピクシブでは、データ活用に対する意識は非常に高いものの、まだまだ向上の余地があると考えています。引き続き全社的なデータ活用文化の醸成に向けて、継続的な支援を行っていきます。
改めて、この記事が、社内でのデータ推進を検討している方や、データ活用文化の醸成に取り組みたい方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
データ活用につながる情報は以下の記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。