2020/12/25 編注:この記事は2018年当時のエピソードです。現在はこの方法では審査に通らなくなりました。
おばんです、給料日であることをいいことに、にじさんじくじに課金しまくったBOOTH iOSエンジニアの @danbo-tanaka です。
平素よりBOOTH iOSアプリをご贔屓いただき、ありがとうございます。 みなさんもうアプリをアップデートしていただけましたでしょうか? 8月16日(木)にリリースしたv2.12.0では、これまで要望の多かった有料ダウンロード商品の販売を実装しました!🎉
これまでiOSアプリにおいて、デジタルコンテンツの購入に対応したアプリは多くありませんでした。それはAppleが用意したアプリ内課金(通称Apple税。手数料として30%をAppleに支払う必要がある支払い方法)を通さなければ、基本的にデジタルコンテンツの取り扱いが許されなかったという理由からでした。 しかし今回BOOTH iOSアプリではその縛りをガイドラインに抵触しない方法で、アプリ内課金以外の方法を使ってデジタルコンテンツの購入を行うバージョンアップを成し遂げました。
この記事ではAppleのガイドラインと比較して、BOOTH iOSアプリでは有料ダウンロード商品をどういうスタンスで取り扱っているのか、なぜデジタルコンテンツをApp内課金以外の方法で購入できるのかを紹介していきます。
有料ダウンロード商品が取り扱える根拠
まずは結論から。
App Store Reviewガイドライン(※1)を確認し、以下の項目を解釈の鍵としました。
3.1.5(a)アプリケーションの外部で使用する商品やサービス: ユーザーがアプリケーションの外部で使用する商品やサービスをアプリケーションで購入できるようにする場合、そうした商品の支払いにはApp内課金以外(Apple Payや クレジットカードなど)の方法を使用する必要があります。
詳しく見ると、以下の一文の解釈が重要になります。
ユーザーがアプリケーションの外部で使用する商品やサービスをアプリケーションで購入できるようにする場合
- アプリケーションの「内部」で使用する商品やサービス: App内課金での支払い
- アプリケーションの「外部」で使用する商品やサービス: App内課金以外の方法での支払い(クレジットカード支払いなど)
つまりソーシャルゲームの消耗型アイテムや、その他デジタルコンテンツは アプリケーションの内部で使用する商品 に該当するのでApp内課金での支払いをしなければいけませんが、BOOTH iOSアプリで購入する商品はアプリケーションの外部で使用する商品に該当するはずなので、有料ダウンロード商品の取り扱いも可能であると判断しました。(BOOTH iOSアプリではデジタルコンテンツを扱うためのビューワー機能を持たないため)
この解釈のもとアプリを審査に出したところ、無事リリースが出来ました。🎉 開発担当者もにっこりです。
・要望の声が送られるたび、開発担当者も共感の声をもらして止まなかった、有料ダウンロード商品の購入をできるようにしました!
ーヽ(・∀・)ノー(∀・ノ)ー(・ノ )ーヽ( )ノー( ヽ・)ー(ヽ・∀)ーヽ(・∀・)ノーヤッター
v2.12.0のリリースノートより。
他のアプリも参考にしてみた
有料ダウンロード商品の販売を実装する前に、他のアプリではデジタルコンテンツの扱いがどうなっているかも調べました。「他のアプリで出来ているからうちのアプリも審査が通るはずだ」は根拠にならないですが、気になったので調べました。
Oculus
Oculusアプリ内ではデジタルコンテンツの購入が 出来る。
OculusアプリはOculus Go内で使用するソフトウェアの購入ができます。 このアプリの審査が通っている理由は、Oculus Goで使用するソフトウェアは アプリケーションの外部で使用する商品やサービス であり、Oculusアプリ内では購入したソフトウェアを使用しないからかもしれません。
KindleとAmazon
Kindleアプリ内ではデジタルコンテンツの購入が 出来ない。
Kindleアプリはシンプルな電子書籍のビューワーアプリであり、Kindleアプリ内から商品の購入はできません。 また、Kindleアプリとは別のAmazonアプリからもKindleの電子書籍を買えません。
Kindleアプリが単純なビューワーでなく、購入も一緒にできるアプリであれば、アプリケーションの内部で使用する商品やサービス に当然ながら該当するので、App内課金でなければいけません。 ただAmazonアプリとKindleアプリは別物で、アプリケーションの外部で使用する商品やサービス に該当するはずであり、AmazonアプリでKindleの電子書籍の購入は可能だと思うのですが、なぜかそうなっていません。
このことから仮説を発展させると、他のアプリであろうとも アプリケーションの内部で使用する商品やサービス に該当してしまうのかもしれません。あるいは同じデベロッパーからのアプリだから、という理由もあるのかもしれませんが、これらはあくまで仮説です。
レコチョク
レコチョクアプリではデジタルコンテンツの購入が 出来ない。
Webサービスのレコチョクでは楽曲の購入が出来ますが、レコチョクアプリは「音楽プレイヤーアプリ」という位置付けのため、購入は出来なくなっています。 利便性を考えると、プレイヤーアプリからも購入ができると良いように思えますが、そうすると アプリ内部で使用する商品 に該当してしまうため、App内課金以外での支払い方法に対応できないのかもしれません。
Bandcamp
Bandcampアプリではデジタルコンテンツの購入が 出来る???
アプリからPayPal(App内課金以外の方法での支払い)で購入した楽曲データをアプリ内で使用することができます。 ただしいくつか気になるポイントが見つかりました。
- コンテンツは購入しなくても全て試聴できる?
- 購入したら、自分のCollectionという形でアプリ内にコンテンツが保持される(試聴ページを保存しているだけという体?)
- 販売しているコンテンツはダウンロードコンテンツのみでなく、CDやカセットとセット売りされている。
そもそも支払いに対する対価は物販商品なので、問題はないということかもしれません。
他のアプリを調べたまとめ
他のアプリも調べましたが、一旦参考になりそうなものはここまでです。 あくまで先述した通り、「他のアプリで出来ている」は根拠にはならないですが、改めて調べてみると仮説が妥当なようにも見えてきました。
さいごに
有料ダウンロード商品を解禁することで増える売り上げの予想も、なかなかのものだったのでやらない手はないと思っていました。売り上げを増やせば、その分だけクリエイターに還元されるので、クリエイターに対してもっとよくお金がまわるようにしたいというミッションがありました。
「そもそも有料ダウンロード商品を取り扱えない理由ってなんだっけ?」という疑問から調べ始めましたが、腑に落ちる結論が出せたように思います。審査とリリースには不安もありましたが、「もしリジェクトを受けたら、理由が明確になるしいっか」くらいの気持ちで開発していました。
そしてなにより、ユーザーである私がアプリで一番不便に思っていた箇所を直せてよかったです。☺️
※1 App Store Reviewガイドラインは執筆時点のものを参考にしています。