サービスづくり

pixiv MEETUP「新規事業はどのように生まれたのか? – ピクシブでプロダクトを創るということ」

ピクシブ株式会社 ピクシブ株式会社
2017.10.4
シェア
ツイート
ブックマーク

2017年9月9日に開催したpixiv10周年記念イベント「pixiv MEETUP -10th Anniversary-」。本イベントではCEOやCTO、エンジニア、プロダクトマネージャーなど様々な立場のメンバーが、これまでどのように考え、どのようにチャレンジしてきたのか技術的知見を交えながら発表を行いました。

セッション「新規事業はどのように生まれたのか? - ピクシブでプロダクトを創るということ」では、pixiv Sketch・Pawooプロダクトマネージャーの清水智雄、ImageFlux事業責任者の道井俊介が登壇。pixivプレミアムプロダクトマネージャーの山下鎮寛がモデレーターを務め、新規事業創出の経緯について話しました。

楽しく創作活動する上で“欠けたピース”を新規事業で埋める

──私は今年2月にピクシブに中途入社して約7カ月が経ちましたが、特に驚いたことは新規事業の多さです。なぜこんなに新規事業を立ち上げ続けるのでしょうか。

清水:ピクシブの企業理念は「創作活動がもっと楽しくなる場所を創る」です。それはつまり、創作活動を楽しむ人がもっと増えていくこと、また創作活動を楽しみ続けてもらうということです。それを実現するために欠けているピースがたくさんあるので、それを埋めていく必要があるのです。

──そのためには欠けているピースを見つける作業が必要ですね。

清水:それには2つのアプローチがあると考えています。創作活動をするユーザーが日々の活動の中で、すでにやっているけどまだ体系化、システム化されていないものを見つける。それを僕らがサービス化して提供するというのが1つです。

例えば「さぎょイプ(作業イプ)」と呼ばれる創作者の間で行われている行動があります。これは作業中に1人だとサボってしまったり、集中力が続かなかったりするときに、同じような同志とSkypeやLINEなどを使っておしゃべりしながら作業することで作業自体を楽しめるようにするというものです。しかし、一緒に作業する人と連絡をとってタイミングを合わせなければならないなど、ハードルが高い。そこで生まれたのがお絵かきコミュニケーションアプリ「pixiv Sketch」のライブ配信機能です。サービスとして提供することで簡単かつ便利になり、創作活動がより楽しくなって、続けられるだろうというのが1つです。

もう1つは、時代の流れや技術革新によって、こういう創作活動ができるようになるだろう、新しい楽しみ方ができるだろう……というアプローチです。例えばpixiv Sketchでは昨今急激に普及するライブ配信への対応や、AIを使って自動で着色する機能などを実現しています。これらは技術革新の流れでこういうことができる、もっと新しい表現や楽しみ方ができるのではないかというアプローチです。ただ、あまりにも突拍子もないものを提供しても使ってもらえないので、“半歩先”くらいがちょうどいいのではと思っています。

道井:ピクシブの新規事業は「クリエイターのためにどうすればいいだろう」と考えて作られているものがほとんどですが、「ImageFlux」は違います。社内にあった画像変換技術を切り出して、ビジネスとして提供するというものです。

世の中にはすごい数の新規サービスが増えており、それぞれで画像を変換する必要があります。サムネイル生成なども含めると、画像変換の必要がないサービスはないので、ほとんどが画像変換技術を活用していますが、誰もやりたくてやっているわけではありません。pixivも画像変換サービスではないですし。それをすべての会社が負担し続けるのはおかしいなと考えました。オープンソースソフトウェアにして公開してもいいのですが、脆弱性(のリスク)やサーバー運用の負担などを考えると、(企業の負担は)全然変わりません。それならサービスとして提供すれば……というのが原点です。

─ほかの企業が負荷として抱えているなら、収益体として提供した方がいいということですか。

道井:そうです。pixivはクリエイターのことを考えたサービス作りをしたいので、pixivは投稿者を見て、ImageFluxは画像変換技術を見るということです。

現場で必要になるキーワードは「妄想力」

──どういうマインドセット、スキルセットを持っている人が新規事業をやるべきなのでしょうか?

清水:素質としてはサービスやプロダクトに対する興味の高さが大前提です。身の回りやサービス、プロダクトのここがいいよね、ここが問題だよねと気づくことができて、具体的な改善策を考えられるような能力がまずは必要です。それに加えて「妄想力」がキーワードです。

──「想像力」ではなく「妄想力」ですか?

清水:「妄想力」の方がニュアンスが近いと思うんですよ。妄想には「流れ」があって「ストーリー」がある。サービスを考える上でそれが重要です。時代の流れもありますし、ユーザーの行動という流れもある。新しくサービスを提供した後にユーザーが使う流れも含めて、現在から未来にかけて妄想できないと、限りなく正解に近いものは生み出せないと思います。

道井:それにプラスすると「365日考え続けられるか」。99%くらいはどうでもいいことだけど、ずっと考え続けると、すべてのものが一気につながって解決する瞬間、降りてくる瞬間があります。

清水:24時間、年がら年中考えています。任天堂の宮本さんは「アイデアは複数の問題を一気に解決するもの」だと言っていますが、まさにそうです。考えれば考えるほどいろいろな「点」が思い付きます。こういうアイデアは面白いなとか、でもちょっとここはまずいな、物足りないな……と。だいたいは「これで行ける」とはなりません。それでもずっと考えているうちに、新しい「点」が見つかり、一気につながって今まで抱えていた問題が全部解決する瞬間があります。そのときに「このアイデアは行ける、プロジェクト化しよう」となるのです。

新規事業立ち上げチームに必要な資質の1つは「分かり手力」

──新規事業の立ち上げチームに求められる資質は何ですか?

清水:立ち上げ時の事業内容はまずは一人で考え、その後チームと一緒に考えるという感じです。やはり一人で考えるのは限界があります。チームで話しているうちに最後の「点」が見つかることも多いです。一緒に考えられるチームが必要です。

──一人ひとりが持っている資質というと、どういう人がふさわしいのでしょうか?

清水:10のうち2を言えば伝わるような“分かり手力”ですね。具体的には対象になるドメインの理解力、技術的な理解力に加えて、妄想力もある程度備えていてほしいです。毎回1から10まで全部説明しなければ伝わらないのではスピード感が出ません。少し話すだけで「ああ、分かる」と。物事に対して能動的にわかろうとする力が必要じゃないかと思います。

もう1つは「攻めの姿勢がある人」です。攻めの姿勢がないと新規事業はやっていけないと思います。新規事業は正解がないから、常に不安が付きまといます。仮説検証やユーザーインタビュー、ユーザー調査とかをやりますが、結局ユーザーに使ってもらうまでは分かりません。だから常に正解を求める人だと何一つ進みません。新規事業をやるチームメンバーには、「これをやったらユーザーに楽しんでもらえるんじゃない?」と言ったら「いいですね、やりましょう!」と返ってくるぐらいの前のめりなノリが欲しいと思うし、やっていて楽しいです。「楽しさ」というのがサービスにも表れるので、そういう素質が必要かなと思います。

道井:「信頼してすべてを任せられる相手がいるか」が大切だと思います。「これをやろう」と言ったときに、「この人がやろうって言ったら先に進めるんじゃないか」と信頼できるのがすごく重要だと思います。

→ 次回はセッション「数値でみるプロダクトの成長フェーズ - pixivの傾向から紐解く」の内容をご紹介します。(※ 近日公開予定)

(執筆者:安藏靖志)

シェア
ツイート
ブックマーク