entry-header-eye-catch.html
entry-title-container.html

entry-header-author-info.html
Article by

ピクシブのこれからについて、COOとCTOから皆さまへお伝えします(前編)

ピクシブでは企業として掲げているミッション・ビジョン・バリュー達成のため、毎年7月は全社員が一堂に会し、取締役以下全マネージャーより全体方針を踏まえた事業部単位の目標を共有する時間を設けています。
本日はそこからピクシブのテックビジョンにスポットライトを当てつつ、取締役COO清水(以下ushioと表記)とCTO道井(以下harukasanと表記)の対談形式で会社の未来について前編・後編に分けてお話させていただきます。

ushio : 今までピクシブが「どのような姿を目指して」「どのように舵を切って成長していくのか」外部に向けて詳細に語る機会はそう多くありませんでした。ですので本日は、CTOとの対談形式で事業目標とそれに伴う技術・開発方針について話していきたいと思います。harukasan、よろしくお願いします。

harukasan : よろしくお願いします。

ushio : まず簡単に自己紹介しますと、私、清水は、2017年にピクシブ株式会社に入社してから、ピクシブ全体の事業をみてきました。その頃から一貫して掲げているのが「10年成長」という言葉です。何故かというと、ピクシブはクリエイターの皆様の大切な大切な作品を掲載していただいており、この1億に近い作品群が、後世には無形文化遺産にも選定されるほどの価値があると考えているため、その価値を後世まで残すためには我々が企業として安定的に成長していかねばならないという使命感からこの言葉が来ています。
その後、2019年から取締役COOを拝命し、引き続き事業部全体の責任者として目標達成に取り組んでいます。 

harukasan : 私、道井は、2012年に新卒としてピクシブに株式会社へ入社してから、インフラ部でピクシブの配信、データ基盤などの設計、開発を行ってきました。2016年から ImageFlux の事業責任者を務め、2019年から技術開発本部本部長としてピクシブ全体のインフラストラクチャを担当しています。
そして2020年からCTOを拝命し、着任してからはピクシブの事業方針と技術的戦略をマッチさせるため、少しずつ方針転換を行なってきました。

ushio : ピクシブの企業理念である「創作活動がもっと楽しくなる場所をつくる」を実現するために、2019年から全社OKR事業目標をいくつか掲げていましたが、そこから得られた成果も踏まえて2020年は指針を新たにしました。
社員には、今の事業・プロダクトの成功を目指すという前提はありつつも、下記5つをフォーカスポイントとして事業を運営して貰っています。

1. グローバル
2. 機能間連携
3. 安心・安全
4. ブランド
5. クリエイティブツール

harukasan : まず技術開発・方針を定めるに当たっては、この全社の事業目標に沿って検討する必要があります。先ほどushioさんから「10年成長」の話がありましたが、この言葉は言い換えると持続可能な成長だと言えます。
10年成長というのは、ピクシブが10年続けばいい、ということではなく、継続的に成長できるための持続可能性を持つということです。例えば、pixivの過去10年を振り返ったとき、会員数は5,000万人を越え、10年前の50倍になっています。これは急激に会員数が増えたわけではなく、10年以上にわたって会員数が増え続けた結果です。ある瞬間だけを切り取れば、非常に大きな成長にみえますが、振り返るとこれは我々が継続的に成長してきた証でもあります。
このような持続的な成長を続けるためには、その瞬間には前に進んでいる実感がなくても、常に進み続ける能力を持っていることが必要です。この能力を高めるためには、継続的デリバリーに関わる能力を如何に高めることができるかが重要になります。
継続的デリバリーとは、プロダクトの改善を継続的にリリースできるシステムのことですが、このシステムを円滑に回していくために、いわゆるCI(継続的インテグレーション)やデプロイの改善だけではなく、組織体制や、アーキテクチャの見直しも必要となります。つまり、継続してプロダクトを改善してくためには、技術的な仕組みだけでなく、組織体制も含めて、プロダクトの改善を継続しつづけられる能力を持つことが重要です。

ushio : それでは今から具体的な全社目標について発表させていただき、それに付随して技術的にはどのような取り組みを行うべきなのか、こちらはharukasanの方からもう少し具体的に説明させていただきます。

ushio : まず一つ目のグローバル。「10年成長するためにクリエイターとファンが言語言語・国境の壁を超えて繋がることができる」という指針を掲げています。

pixivはサービスリリースされて10年以上になりますが、今でもデイリーで約47,000人の方に新規会員の登録をいただいており、そのうち7割を海外ユーザーが占めています。今でもこの規模でユーザーが増え続けているサービスは、日本でもそう多くありません。
我々は多くの国々のユーザーを抱えるプラットフォームとして、クリエイターご自身やクリエイターの生み出す創作物を広く世界に届けていきたいと考えていますが、一方で言語や文化の壁は高く、クリエイターと創作を楽しむコンシューマー(ファン)双方に対して、 プラットフォームとしての価値を発揮するには、まだまだ新たに取り組むべき事が残されています。

具体的には下記三点が挙げられます。

  • UI・コンテンツ翻訳などを行い、海外ユーザーの流入と定着を促す
  • 海外の強力なクリエイターと連携する
    それをフックにpixivを中心としたプラットフォームを海外に発信していく
  • 海外市場に進出するために、法的リスクに向き合い一つずつ対応していく

これらの施策に、全体MAU・売り上げ・海外クリエイター数を指標としてコミットしている状態です。

harukasan : 技術的には、「壁をなくし世界中の人が創作を軸に繋がる」という大目標の達成のために、「グローバルを前提としたアーキテクチャ」への移行を目標としています。 例として、pixivの画像配信では単純にCDNを利用しただけでは海外からのロード時間を改善することができない、ということが今年行った調査でわかりました。この調査から海外における画像配信を改善するためには、その地域に最適なインフラストラクチャを提供する必要があるということが言えます。

これらの課題を解決する施策として、グローバルを前提としたアーキテクチャに段階的に移行する計画を立てており、具体的に考えた施策としては、下記が挙げられます。

  • 全ての地域に対して、段階的に進出できるアーキテクチャへ移行していく
  • 地域ごとに最も最適な方法を選択できる状態にする
  • ストレージとデリバリーの2種類においてグローバルに展開できるようにする

ushio : 二つ目ですが、機能間連携。「サービス連携を行い多角的な創作体験を提供する」という指針です。
ピクシブにはpixivを中心として、BOOTHやpixivFANBOX、pixivコミックのように複数のサービス・事業を含めたピクシブとしての経済圏があります。我々としてはこのピクシブの経済圏で創作活動をより楽しんでいただきたいと考えている反面、まだサービス間で連携した体験を生み出せていないと感じています。 そこで具体的に考えた施策としては、下記が挙げられます。

  • UI/UXデザインやシステム連携を、横断的&継続的な観点で設計する
     ・アカウント/決済/データの各基盤を整備し、同一IDで全サービスを利用できる状態にする
     ・相互送客を活発にするための体験の統一
  • プロダクトを超えた企画立案、運営

harukasan : サービス連携を実現するために、技術的には、サービスを横断して利用している部分を切り出して、基盤としての独立性を確保しようとしています。具体的なサービスをひとつ例として挙げると、pixivアカウントの仕組みや決済は、今まで各サービスに直接実装されていましたが、共通で利用している機能を基盤として切り出し開発出来る体制を作っているところです。

複数のサービスを横断した機能を実現するために重要なのは以下のポイントです。

  • チーム外の人物の許可を得ずに対象システムに大幅な変更を加えられる
  • 変更作業で他チームに頼ったり、相当量の作業を課すことなく大幅な変更を加えられる
  • 他チームとやりとりすることなく作業を完遂できる
  • 依存する他サービスに関係なくオンデマンドでデプロイ、リリースできる

これはLeanとDevOpsの科学という本では、アーキテクチャに関わるケイパビリティと呼ばれているものですが、基盤サービスのように複数のサービスに依存しているシステムを開発する上では非常に重要な能力だと思っています。

(後編へ続きます。次回更新は10月初旬頃を予定しています。)