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クレジットカード決済システムの可用性向上とそれに伴うサービス共通利用規約の改定について

こんにちは、CTOのharukasanです。私が担当しているファイナンシャルサービス本部ではピクシブが運営している各サービス(pixiv、BOOTH、pixivFACTORY、pixivFANBOX、pixivコミック、Pastelaなどなど)においてご利用頂く、決済・送金といったお金のやりとりに関するシステムの構築・運用を行っています。

ピクシブでは決済に関する手続きを変更することを目的に、2024年8月1日にサービス共通利用規約の改定をします。この記事では今回の規約改定を行う理由である、クレジットカード決済システムの可用性向上のために行うクレジットカード決済の転送サービス導入について、クレジットカード決済の仕組みも踏まえてご説明します。

ピクシブのサービスにおけるカード決済の仕組み

ピクシブでクレジットカード決済を使った場合のお金の流れを簡単に図示してみました。実際にはもうちょっと複雑ですが、ここではクレジットカード決済に関連する登場人物だけを示しています。

BOOTHのショップで商品を購入する場合を考えてみましょう。ピクシブではクレジットカード決済を提供するために決済代行業者(PSP; Payment Service Provider)が提供する決済代行サービスを利用しています。

カード登録画面や決済画面で入力したカード番号は直接決済代行業者のサーバーに送信されています。これによってピクシブのサーバーにクレジットカード情報が保存されることなく、安全に決済できる仕組みになっています。

決済代行サービスを経由して決済情報が送られる先のカード会社をアクワイアラーと呼びます。アクワイアラーはクレジットカードを利用出来る加盟店を管理し、カードを発行している会社(イシュアー)への代金請求や加盟店への代金支払いを担当している会社です。アクワイアラーとイシュアーはクレジットカードネットワークを通してやりとりし、最終的に購入代金がカードを発行しているイシュアーから購入者へ請求されます。

用語のまとめ

  • イシュアー: 利用者に対してクレジットカードを発行・提供するクレジットカード会社
  • アクワイアラー: クレジットカード決済において、クレジットカードを利用出来る加盟店を管理する業務を行っているクレジットカード会社
  • 加盟店: クレジットカード決済が利用出来るお店や企業のこと
  • 決済代行業者 (PSP): 加盟店とアクワイアラーの間にはいり、複数のアクワイアラーや決済手段をまとめ、契約や支払いを代行する決済代行サービスを提供する事業者
  • 決済代行サービス: 決済代行業者が加盟店に提供している、契約・支払い代行・決済システムなど決済に関わる機能をまとめたサービス

実際には、ピクシブでは複数のアクワイアラー、決済代行業者と契約し、複数の決済代行サービスを利用するようにしています。先ほど説明したように、ピクシブではカード情報をサーバーに保存しておらず、決済代行サービスのシステムに直接カード情報を送信しています。そのため、決済代行サービスで障害や長時間のメンテナンスが発生すると、一部の決済が利用できなくなってしまうという長年の課題を抱えていました。

決済代行サービスを冗長化する

決済代行サービスの大規模な障害やメンテナンス発生時にも決済が使える状態を維持するためには複数の決済代行サービスを常に使える状態に維持する、つまり決済代行サービスの冗長性を確保する必要があります。

先ほど説明したとおり、ピクシブではセキュリティ向上のため、ユーザーのカード情報を直接決済代行サービスに送信して保存する「カード情報非通過型決済」を導入しています。そのため、ユーザーのカード情報は決済代行サービスのサーバーに保存されており、基本的に取り出すことができません。

別の手段としてピクシブのサーバーにカード情報を保存する方法もありますが、そのために必要なセキュリティ対策のための投資費用、クレジットカード情報を取り扱うための国際基準であるPCI DSSの準拠性確認など、さまざまなコスト増があり、現状の手数料率では実現できません。

この問題を解決するため、ピクシブでは決済情報の転送サービスの導入をすすめてきました。転送サービスはクレジットカード情報を保存し、複数の決済代行サービスを利用して決済を提供します。こうすることにより、決済代行サービスで障害やメンテナンスが発生した場合でも、転送サービスを通して仕向先の決済代行サービスを変更することが可能になります。もちろん、転送サービスの提供事業者は決済代行サービスと同様のセキュリティ水準を満たしており、利用者のカード情報は安全に保管されます。

転送サービスを利用するためには利用者からの同意を取得する必要があり、2024年8月1日に改定するサービス共通利用規約第19条の2において、カード情報を伝達することを明記する改定をおこなうこととなりました。転送サービスを利用し決済代行サービスを柔軟に切り替えるようになることで、クレジットカード決済が長時間止まる事態をなるべく少なくすることを目指しています。

創作活動におけるお金に関する悩みを解決する

ファイナンシャルサービス本部では「創作活動における漠然としたお金の悩みを解決する」ことをミッションにクレジットカード決済以外にも、銀行口座からの直接決済である「ピクシブかんたん決済」、プリペイド式電子マネー「pixivcoban」などさまざまな決済手段を構築・提供しています。

ファイナンシャルサービス本部が発足し2年ほどになりますが、クレジットカード決済をはじめとして決済において解決しなければならない課題はとても多く、解決の道筋がたっていないものも多くあります。基本的な考え方は「お金を支払いたい人が使いたい手段でお金を支払えるように、お金を受け取る人がいつでもお金を受け取れるように」維持し続けることです。転送サービスの導入で解決できるのは、決済代行サービスの冗長化だけであり、他の問題が解決されるわけではありませんが、今後も決済の可用性を担保するため様々な施策をすすめてまいります。

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harukasan
1988年生まれ。久留米高専、九州工業大学を経て、筑波大学大学院システム情報工学研究科博士前期課程修了。2012年ピクシブ株式会社に入社。インフラチームとして画像配信、ログ解析基盤などを担当。現在はCTOを務める。