ピクシブはこれまで一貫して「クリエイターさん個人の活動」に注目し、事業作りを行ってきました。それは「創作活動がもっと楽しくなる場所をつくる」という、ピクシブの企業理念の”主語”にも強く表れています。
今年で公開13年目となるイラストコミュニケーションサービス「pixiv」は、ローンチ後の早い時期から出版社様とのアライアンス活動をすすめ、公式としてファンアートやプロデビューを後押しする企画を進めてきました。2013年からは、ファンへの作品販売や、支援を受け取るためのプラットフォーム運営にも事業を拡大しています。ピクシブが運営する10を超えるプロダクトのすべてが、企業理念に矛盾ないコンセプトで機能しています。
ここ数年は、クリエイターさんの活動の場をさらに拡大すべく、海外展開の強化にも力を入れてきました。しかし、多くの問題は片手間で解決できるほど簡単ではありません。
「ブランドアクティベーション室」は、海外に特化してピクシブが運営するプロダクトの価値を最大化する専門集団として、2019年10月に編成されました。私、川田(@_furoshiki)は同チームのマネージャーを担当しています。
ピクシブが事業の海外展開を難しくする3つの壁
日本のサブカルチャーは世界中の人たちに愛され、ハリウッド映画さえも凌駕する勢いで成長を続けています。ピクシブのプロダクトを通じて公開されるイラストやマンガなどの作品は、海を超え、東アジア諸国のファンを巻き込む流行をつくっています。
また、海外のクリエイターさんによるpixivの活用も進んでいます。pixivでは、日本のイラストと見間違えるような作風の作品が、韓国・台湾・シンガポールなど日本以外の地域からも多く投稿されています。
現在、ピクシブのプロダクトに共通利用しているアカウントシステムにおいて、新規登録者の約63.5%は日本以外からのアクセスです。もはや完全なグローバルプラットフォームといえますが、海外におけるプロダクトの価値はまだ十分に引き出せているとは言えません。
実際に以下、3つの障壁をクリアすることが求められており、私たちが主導し解決に当たっています。
1. 市場の壁
海外では、ゲーム・マンガに関わる業界の仕組みは日本と異なり、クリエイターさんの活動内容もまた大きく異なります。
東南アジアの多くの国は市場が未発達で、イラストレーターや漫画家などのプロになる手段も少ないため、自国以外に仕事を得る機会を求めます。英語や日本語を学び、グローバルに活動できるSNSを通じて自身をプロモーションする傾向にあります。
一方、北アメリカでは、日本のアニメ調イラストのニーズがインディーに偏る環境にあり、個人での活動も盛んです。日本の少年漫画のみならず、アメコミヒーローが子どもたちを熱狂させ、サブカルチャーとは異なる巨大な創作文化を築いています。
このような環境の差異を認識し、ピクシブが提供できる価値を最適化して提供することが求められています。また、プロダクトのブランド改善も求められます。
2. 言語・文化の壁
創作表現を意味する概念やサブカルチャー由来の用語は、国の文化やローカルコミュニティの影響を強く受けます。これが、国や所属コミュニティ間において、言葉やニュアンスを正確に伝えることを難しくします。
例えば、「ファンアート(Fanarts)」という言葉は、日本だと多くの人々にアニメ調のイラストをイメージさせますが、USではアメリカンコミックなどの幅広いジャンルをカバーするため、大きく乖離したイメージを抱かせることがあります。日本語と中国語の言語による違いがコミュニティに断絶をつくり、中華圏だけに存在する独特な言い回しのサブカルチャー用語が生まれることもあります。
こうした違いを乗り越え、クリエイターさんの作品がそれを求める人たちの元へと届くよう、プロダクトやコンテンツをローカライズしていくことが求められています。
3. 法制度・決済の壁
訴訟社会のアメリカでは、常に法制度に関わるリスクがつきまといます。それは作品の表現内容に踏み込んだものも含みます。世界のどこにいても、クリエイターさんとファンとの間で作品の権利が守られつつ、人々が安心・安全に作品を楽しめるように、ピクシブがこの問題に取り組まなくてはいけません。
ピクシブの多くのプラットフォームが扱うデジタルコンテンツは、流通を容易にする一方で、各国に依存した決済手段や税制が支払いに制約を作ります。国によっては、クレジットカードがまったく普及していなかったり、ローカルな支払手段に制限されます。またデジタルコンテンツによるクロスボーダー取引は、通常とは異なる税制が適用されます。
世界に日本の創作文化を広げる
私たちブランドアクティベーション室は、現在まだ10人もいない少数のチームです。マーケティング、ブランディング、リーガルマネジメント、ローカライズなど、さまざまな専門性を集約し、社内のプロダクトが抱える海外展開の障壁に対処しています。
海外専門のチームということもあり、国籍も得意言語も住んでる国も、考え方や価値観も、すべてにおいて多様なメンバーが集っています。しかし皆、創作活動を愛していて、クリエイターさんに深い敬意を持っているという点は共通しています。
「世界の創作文化に影響する、誇れる仕事をしたい」「自国と日本の作家さんと繋いで作品を生み出したい」「アメリカにもサブカルチャーアーティストの活動の場つくりたい」と、メンバーそれぞれが創作文化の中に叶えたい夢を描き、日本のピクシブという場所でそれを実現しようとしています。
We are hiring!
ピクシブでは、ビジネス開発に高い専門性を持つグローバル人材を募集しています。
私たちのチームへジョインすれば、日本語・英語・中国語などの様々な言語の処理能力向上が見込め、また海外サブカル市場の普遍的知識が得られます。業界として過渡期の今を乗り越えれば、市場価値の高いユニークな人材に化けると感じています。ピクシブから、世界中のサブカルチャーを革新的に変える優れた人材を排出するのが、マネージャーである私の夢であり野望でもあります……!
また、日本に留学中の大学生(特にアメリカや東アジア出身でローカルな知見をお持ちの方)を、アルバイトとして採用しています。国籍は一切問いません。pixivというプロダクトのことを知らなくても、海外に点在するファン主導アニメサイトに一度でもハマった経験があれば、私たちの活動に多くの示唆が得られます。多くのことが行えなくても、まずは翻訳の仕事から始めて、少しずつ学びながらステップアップしていきましょう。
互いに切磋琢磨しながら、日本の優れた創作文化を世界のナンバーワンへと押し上げる、野心的なチームを共に作っていければと思います。ご応募、お待ちしております。