クリエイターによる創作の総合マーケット『BOOTH』のPMをしているwatasukeと申します。
2019年にBOOTHでは「ドール」「ぬいぐるみ」「ソフトウェア」「TRPG」の4つのカテゴリを追加しました。
その結果「カテゴリをつくるということは居場所をつくることだ」と感じた話をします。
まずはそれぞれのカテゴリの追加前後の取引推移をご覧ください。
伸び方に違いはあるものの、どれもカテゴリを追加してから購入数も販売ショップ数も伸びていることがわかります。
まず、これらのカテゴリに出品するクリエイターの方々に創作物を販売する機会を増やせたこと、またクリエイターのファンの方々やカテゴリのクラスタの方々に素敵な作品との出会いを増やせたことを非常に嬉しく感じます。
私はこの結果を単に「カテゴリを増やしたから伸びた」ではなく、「求められている居場所を提供できたから」と捉えています。
これらのカテゴリ追加のきっかけは、どれも「居場所が求められているのでは?」という気づきが起点になっているからです。
「居場所が求められていそう」という気づきは、カテゴリ追加を希望するフィードバックはもちろん、BOOTH内での関連作品の取引の盛り上がりや、BOOTH以外ではそれらの作品をどう販売しどう出会われているのかといった状況の把握から得ました。
その結果BOOTHにこれらのカテゴリを追加すべきだと判断してからは、以下のことを念頭に置いて開発を行いました。
「BOOTHは自分の作品を出品するのに適した場所だ」
「BOOTHに行けば自分の求めるカテゴリの作品に出会える」
と感じてもらえること、総じて
「BOOTHは自分の居場所だ」
と感じてもらい、居着いてもらうことです。(綺麗に言い過ぎかもしれませんが、「この仕事は何のためのものなのか」を意識することは重要だと思っています。)
その意識はカテゴリ名やおすすめタグのような部分にも込めたつもりです。
カテゴリが存在することで「このカテゴリに関する作品を出して良い場所なのだ」と伝わると思いますし、逆にカテゴリが存在しなければ「ここは自分向けではないようだ」と捉えられかねません。
そして利用し続けてもらえてはじめてカテゴリは存在意義を持つため、求められるかたちであることも重要です。
今回これらのカテゴリを追加してから、まずは既にBOOTHを利用しているクリエイターの方々が利用され、それを受けて続々と「BOOTHであのカテゴリも販売できるんだ、購入できるんだ」と認知され輪を広げていただいたからこそ伸びたと見ています。
カテゴリ追加は運営が行うものではありますが、なによりもまずそのカテゴリの作品を楽しまれているひとりひとりの熱があってこそ利用されるのだと考えています。
そしてカテゴリ自体もひとつひとつ違う歴史や文化を持っているのだとも。
そのため、この結果を踏まえて「カテゴリをつくれば伸びるからどんどんつくろう」という結論には至っていません。
「作品に適したカテゴリが選択できるから出品する」「カテゴリがあるから検索しやすく見つけられやすい」といった背景はもちろんあるでしょう。
一方で、カテゴリを雑に追加することは単に利用されないだけではなくサービスの使い勝手を悪くすることにもつながります。
単純にカテゴリが増えればUIが複雑になりますし、既に似たカテゴリがあれば出品が分散して検索性が下がります。
一度つくったカテゴリをあとから修正するのにもそれなりの労力がかかります。(ちなみに今回は整理も兼ねてカテゴリの移行統合も行っています。)
つまるところ「サービス全体としての居心地も保てるのか」というバランスを取りながら、「そのカテゴリは居場所として求められるのか」という判断がカテゴリ追加の際には重要だと改めて感じました。
BOOTHはこれまでもカテゴリを通じて居場所をつくってきた歴史があります。
たとえば「ボイス」カテゴリ。
「ボイス」カテゴリは2018年7月に追加されましたが、VTuber文化が盛り上がっていく波に早くから乗れたことで、大きく成長しました。
今ではBOOTHの中でも有数の人気カテゴリとなっています。
次に「3Dモデル」カテゴリ。
BOOTHは2013年12月に誕生しましたが、「3Dモデル」カテゴリはごく初期の2014年3月にすでに追加されていました。
その後4年ほどは大きな動きはありませんでしたが、2018年の夏頃からVR領域の盛り上がりによって、4年越しに大きく成長しました。
時間はかかりましたが、その頃に行われた「BOOTHに3Dモデルカテゴリはあるべき」という判断は正しかったと言えると思います。
ちなみにBOOTHを立ち上げた人間は、今は「3Dを使ったコンテンツを、誰でも創れる」未来に向けてVRoidプロジェクトを牽引しています。いい話ですね。
偉そうに語ってはきましたが、正直BOOTHにも「こうあるべき」と描いている未来に対してまだまだギャップは大きく、改善すべきところは多々あります。
これからも「クリエイターの方々の居場所をつくる」という意識を持ちながら、改善を続けていきたいと思います。