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使われ続けるダッシュボードを作るためにヒアリングすべき4項目とは

こんにちは。アドプラットフォーム事業部の ucchi- です。

今回は、使われ続けるダッシュボードを作るためのヒアリングフレームワークについて紹介します。この記事は、PIXIV DEV MEETUP 2024 の登壇内容を元に加筆修正を行い、文章にしたものです。

スライドはこちらで公開しています。 speakerdeck.com

はじめに

私たちは普段、仕事で多くの意思決定を行います。意思決定を正確かつ高速に行うためのツールのひとつに、ダッシュボードがあります。

例えば、プロダクトKPIダッシュボードを用いて、ユーザー数が伸びているかを網羅的に把握することができます(下図)。また、セールス活動ダッシュボードを確認し、今のままの進捗で売上目標を達成できそうか、それともテコ入れが必要か、検討することもできます。

課題:使われ続けるダッシュボードを作るのは難しい

ダッシュボードを作ることは簡単です。BIツールで適当なグラフをいくつか作り、それらを1つにまとめれば出来上がりです。

しかし、そのダッシュボードが意思決定の場で「使われ続ける」ようにすることは困難です。多くの場合、色々なデータを詰め込んだ”最強”のダッシュボードは、1ヶ月も経つと忘れ去られ、古びていきます。

なぜそうなってしまうのか。それは、ダッシュボードを使う目的である「意思決定」についての考慮が十分ではないからです。

何の意思決定に役立つかわからないダッシュボードは、どれだけ豊富な情報が記載されていようと、すぐに使われなくなってしまいます。一方で、意思決定に役立つダッシュボードは、例えグラフが1つしか載っていないとしても、便利なので使われ続けます。

「ダッシュボードを使うことでどのような意思決定をしたいのか」を明確にすることは、何より重要なのです。

そこで重要になるのが、ダッシュボードを使う意思決定者へのヒアリングです。この記事では、私が独自に考案して使っている、「ダッシュボード」と「意思決定」を繋げるためのヒアリングのフレームワークを紹介します。

解決策:ヒアリングを通じて、「ダッシュボードを何の意思決定に役立てたいのか」を明らかにする

ダッシュボードの作成者と意思決定者が異なる想定で話を進めます。

使われ続けるダッシュボードを作るために、意思決定者にヒアリングすべき項目としては、「前提」「Why」「What」「How」の4つがあります。

使用例をいくつか見てみましょう。

何の業務フローの、どんな意思決定に使われるのかを明確にすることで、ダッシュボードは使われ続けるダッシュボードになります。

ジョブ理論との関連性

この考え方は、マーケティングにおける「ジョブ理論」の話に基づいています。

ジョブ理論の基本的なメッセージは以下です。

「顧客が「商品Aを選択して購入する」ということは、「片づけるべき仕事(ジョブ)のためにAを雇用(ハイア)する」ことである。

ジョブ理論をダッシュボードの文脈に当てはめてみます。

ダッシュボード作成者は、意思決定をしたい人が困っている具体的な状況(何の業務フローで、どんな意思決定をしたいのか)を明確にした上で、その課題(ジョブ)の解決を目的にダッシュボードを作成します。

つまり、「意思決定者は、特定の状況下での意思決定という片付けるべき仕事(課題)のために、ダッシュボード(商品)を雇用(ハイア)する」ことになります。

注意点:当初の相談内容には、多くの場合 What や How しか含まれていない

今回紹介するヒアリングのフレームワークはとても簡単ですが、注意点があります。最初から4項目が揃った状態で相談が来ることはまれだということです。多くの場合、「前提となる業務フロー」や「行いたい意思決定」を飛ばして、「この情報を見たい」や「このデータを集計してほしい」といった内容の相談が来ます。

例えば、広告セールスのダッシュボードの場合。当初の相談内容は「商談の管理を Google Sheet から Salesforce に移行したいので、導入支援をしてほしい」というものでした。やりたいことは明確ですが、なぜ移行したいのか、移行を通じてどのような価値を得たいのかが曖昧でした。

そこで、まずは現状の Google Sheet ベースの商談管理だと何に困るのか、ヒアリングを行いました。その結果、集計業務に課題を感じていることが明らかになったので、これを起点にヒアリングフレームワークの4項目を埋めました。

  ヒアリング前 ヒアリング後
前提 広告セールスチームの週次定例
Why -セールス活動が目標通りに進捗しているか、それともテコ入れが必要か知りたい
What -商談の進捗をフェース毎に可視化
How Salesforce の導入支援をしてほしい Salesforce を導入する

そして、ヒアリング結果をもとに、「前提:週次定例」における「Why:セールス活動が目標通りに進捗しているか、それともテコ入れが必要か知りたい」という意思決定に焦点を当てました。この意思決定に役立つ「What:商談の進捗が一目でわかるKPIダッシュボード」を「How:Salesofore」を用いて作成するプロジェクトを立ち上げました。

2024年10月現在は、Google Sheet で作られた古いKPIダッシュボードが退役し、代わりに Salesforce で作られた新しいダッシュボードが週次定例で使われています。このダッシュボードの数値に基づいて、セールス活動の進捗確認や改善点の議論が行われています。

まとめ

今回の記事では、使われ続けるダッシュボードを作るためのヒアリングフレームワークについて紹介しました。

  • 前提:業務フロー
  • Why:行いたい意思決定
  • What:必要な情報
  • How:見たいデータ

普段の業務では「前提」や「Why」を飛ばして相談が来ることが多いです。丁寧にヒアリングを行い、この4項目をきちんと埋めましょう。

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ucchi-
アド・プロダクト部のデータチームでアナリティクスエンジニアとして働いています。百合とデータ分析と美味しいご飯が趣味。