みなさん、こんにちは。ピクシブの人事部で採用担当をしておりますkamikoです。私は2016年に採用担当者として中途入社し、2021年からは新卒研修の担当をしています。
今年も無事、新卒社員が研修を終えて、各事業部にOJT配属されていきました。
私は全くの未経験から、新卒研修業務にチャレンジすることになったのですが、この経験が誰かの一助になればと思い、前編・後編に分けてHowToを公開します。
研修設計の大まかなプロセス
研修目的の分析→設計→開発→実施→評価の5つで構成されるADDIEモデルを参考にしました。
前編では、分析、設計についてお話しします。
なお、研修全体を設計するにあたり、企業内人材育成入門を参考にしました。ありがとうございます。
研修の目的を決めるためにやったこと
書籍から得た重要なインプットは2つです。
- 戦略的HRM*1に基づいて、研修内容を設計する
- 研修の評価をどのように行うかが重要。研修は受けるだけでなく、身につけて実践することが大切
目的を検討するにあたっては、経営戦略を深く理解し事業計画に落とし込み、かつ毎年新卒を受け入れてマネジメントしている事業部長とマネージャー数名にヒアリングを実施。貴重なインサイトを2つ得ました。
- 「経営戦略に基づいた新卒選考を実施し、入社後はOJT含め3ヶ月の研修期間を経て現場に配属している。そのため、配属後もすぐに活躍できている新卒が多い」
- 「リモート環境での業務で、誤解のないコミュニケーションをとることがより重要になる」
この意見は採用担当者である自分にとって、納得感のあるものでした。
ピクシブは創業2年目から新卒選考の選考ステップにインターンシップが含まれています。社員と同じ業務に取り組むことで、学生側に「業務内容や社風が自分にあっているか」確かめてもらいます。
つまり新卒選考の時点では、会社側も新卒社員側も、大きな懸念は払拭されているのです。座学中心の基礎的な研修を長々受けるより、社員として必要な知識のうち足りない部分を補うだけで、OJT配属後からメンターやチームのサポートを受けつつ、ある程度は自走できるという仮説には説得力があります。
またピクシブでは出社とリモートを組みあわせて業務を行っていますが、現在社内で利用しているコミュニケーションツールは、従来より導入しているGoogle Meet・Slackに加えて、肩ポンするように気軽に会話をする目的で、ボイスチャットに限りDiscordを導入しています。その他、Notionを利用して事業部間・PJ間で情報共有を行っています。
口頭か文章、どちらのコミュニケーションが好ましいかは状況により異なりますが、確実にリモート下では言語化の機会が増えているので、今回は文章コミュニケーションにスポットライトを当てて、研修を設計しました。
ここまで固まったところで、研修テーマをスタートダッシュと銘打ち、目的を設定。
- 配属後の早期立ち上がりとカルチャーに馴染むことで成長のきっかけをつくる
- 裏目的として新卒同士が仲良くなり、助け合える環境を作る
加えて、研修後の理想状態を四つ定義。
- OJT配属先の業務内容以外は、大体のキャッチアップが終わっている
- 社員とストレスや誤解の少ないコミュニケーションが取れる
- 本来の仕事に集中出来る時間が増える
- 色々な人の助けを借りながら、恐れずチャレンジが出来る
そして最終的なゴールとしては、不明点・障壁を自分で探し出して解決策を導き、『最短でゴールを目指すマインドになっていること』と定めて、具体的な研修の設計に入りました。
設計を行う
目的に沿って必要な講義を設計していきます。
配属後の早期立ち上がりとカルチャーに馴染むことで成長のきっかけをつくる
講義はざっくり前半パートと後半パートに分け、前半パートは座学形式で世の中への理解(大局理解)→会社への理解(中局理解)→個人に求められる行動の理解(小局理解)の順番に講義を行うことにしました。
そして後半パートでは前半パートで学んだ知識から課題を用意し、コミュニケーションを取りながら回答してもらうこととしました。
次にカルチャーに馴染むということを紐解いていきます。ピクシブは、個人ではなくチームで価値を最大化させることに重きを置いており、ミッション・ビジョンの達成のために、人(気持ち・認知など人間やソフトに対するスタンス)には優しく、モノ(仕組み・実装など物体やハードに対するスタンス)には厳しく専門性や役割を跨いで、業務にコミットすることが求められます。
そのために会社の体制や、事業・サービス、職種・ルール等の理解を深めることは勿論ですが、お互いへの信頼関係が必要であるため、業務のみならず同じ時間や共通の体験をすることが重要だと考えています。研修初日には、新卒歓迎会を毎年開催して、ピクシブのカルチャーに触れる時間を作っています。
必要な講義や体験設計を行い、約10日間のスケジュールが出来上がりました。
更に研修は受けることが目的ではなく、身につけて実践し、最終的には目標を達成したか評価するところまで設計します。
評価は、OJT配属先のメンターと新卒で1on1を行い、新卒が出来ない、出来るけど苦手、得意の三点についてヒアリングを行い、回答から研修目的が達成できているかを測定します。
そして1on1の内容はOJT終了後、配属先のメンターとマネージャーに、申し送りするところまでをゴールと定めました。
新卒同士が仲良くなり、助け合える環境を作る
OJT配属後も新卒同士が助け合える仲間になるために、研修中に関係を深めることが大切です。
出社は研修初日のみで、残りの日程はリモートなので、活発に意見交換や感想・質問を出しやすいように、新卒のSlackチャンネルへ各講義ごとにスレッドを立ち上げたところ、自然に資料を共有し合うまでになり、狙い以上の大きな効果がありました。
具体例
下記はスレッドで交わされた実際のやりとりです。
また仲間の考えや知見を学びに生かせるように、毎日研修のラスト30分は新卒全員でKPTを行います。
途中で新卒から出てきたKPTにリアクションを返したいとの意見を貰い、会場をFigmaにしたところ、全員が活発にコミュニケーションを取る様子がみられました。
後半パートへ続く
さて講義内容の検討が順調に進んだのは、ここまでです。後半パートの課題検討にあたっては、再び事業部長やマネージャーに知恵やレビューをもらいながら、頭を悩ませることになります。
続きはまた後編でお話ししたいと思います。では皆様、ごきげんよう。さようなら。
*1:企業の経営戦略と連動した人事諸施策を遂行していこうとする考え方