スティーブ・ジョブズ風でプレゼンするわ、と言って文字のほとんど無いスライドを作ったものの、当日は緊張しまくりだった edvakf です。
スライドに載っていない文章が多めだったので、スライド共有サービスなどではなく、こちらに直接スライドを公開することにしました。
ピクシブは12年ほど前から「創作活動がもっと楽しくなる場所を創る」というミッションで様々なサービスを作ってきました。
クリエイターが創作活動を続けられ、生活の手段となり得、そしてファンが好きな作品と出会える。 そんな場を提供することが、創作活動をもっと楽しくすることだと、僕達は考えています。
そんな僕達の2019年のコーポレートメッセージとして、こんなことを掲げました。
僕達は、無理に急成長して急に衰退するようなビジネスを目指したいわけではなく、10年、20年と持続的に成長して、きちんとユーザーさん達に支持され、それが結果的に文化になる。そういうことを目指そうと決めました。
実は、ちょっと前までの僕達は、冗談も含めてですが、「ピクシブは10年後ありません!(笑)」のように言っていました。
メンバーには、会社に依存するのではなく、踏み台にしていってほしいというメッセージでした。 それはある意味では今も正しいのですが、僕達は10年先も成長し続けていくことを目指してシステムと組織を再設計していくことにしました。
ここにお見せしているのは、この10年で世に出たテクノロジーの、ほんの一部です。 皆さん信じられないかもしれませんが、Google Chromeでさえ2010年のリリースだそうです。
このように、今の時代というのは、例えばスマホのような、人々の生活をガラッと変えてしまうようなテクノロジーが毎年のように出てくる時代です。
そんな時代において、10年成長し続けるということは、すなわち10年変化し続けるということです。
雲をつかむような話ですね。
それでも絶対に変わらないのは、テクノロジーは常に資本主義的に合理的な方向に進んでいるということです。
例えば、過去20年間、サービス開発は、よりユーザーに近い人が、少人数チームでPDCAができるようになってきました。
そのほうが「顧客が本当に必要だったもの」が作れるからです。
これはもちろん、スタートアップ界隈全体にとって合理的だからなのと、Facebookのような大企業がスタートアップ界隈全体と戦うために必要だからですね。
今後10年で起こることは、過去20年のトレンドをぼんやりと眺めていれば、なんとなくわかってきます。
例えばマイクロサービスやServerlessなど、どうしても特定のテクノロジーが注目されますが、「誰にとってなぜそれが合理的なのか」ということに注目して大きな流れを見ていけば、自分たちが投資していくべき技術が見えてきます。
僕達は創業以来たくさんのサービスを作ってきました。 その多くは、10人以下の、エンジニアもデザイナーもビジネス職も混在のチームで開発しています。
実はこれは当初からめちゃくちゃ狙ってやったことではありませんが、結果的には現代のサービス作りの方向性に、よくマッチしています。
「顧客が本当に必要だったもの」にフォーカスする少人数のサービスチーム、そういうチームを作ることで、サービス設計の根幹からエンジニアリングの観点が入り、コードベースをコンパクトに保て、手戻りも減らせます。
そしてこちらが、pixivのサービス群全体を一つの街に見立てた図です。先程の図から一気に賑やかになりましたね。
今後の僕達のチャレンジは、まさに先程の図からこの図のように、これらのサービス群の体験を有機的に繋げ、データを有機的に繋げ、ビジネスモデルを有機的に繋げることです。
そしてまた、この街に新たな遊び場を作っていくことです。
ここからは、今日のこれまでのセッションの内容も踏まえて、それが一体どういうことなのかをご紹介します。
僕達は最近「品質"実質"無料」とよく言っています。
うさんくさいと思った方、ありがとうございます。
元ネタは1979年に出版された、Quality Is Freeという本です。 品質を高めることによって手戻りが減るので、長期的には実質無料と言っても過言ではない。そういう意味です。
Secure by Designも似たような考え方です。セキュリティ実質無料ですね。 突き詰めていくと、すべての効率改善に向けての取り組みは"実質"無料と言えます。
例えば、CIの無かった時代と現代ではプログミングそのものが全然別物であるように、開発効率改善によって、考えることが減り、本質的な価値提供に集中できることを目指しています。
僕達は、以前からほぼすべてのサービスのテーブルとログをBigQueryに集約し、データ駆動推進ということで、職種を問わずSQLを使って分析をする文化を整えてきました。
その結果が、BigQueryとそのエコシステムをフル活用したレコメンドに繋がっています。
pixivはMAU 1000万人が目前になり、もはや全員に単一の世界観を提供するのは不可能になってきています。
投稿者、閲覧者、プレミアム、一般会員、年齢、性別、国内、そして海外の各地。 これらすべてのマトリックスのユーザーに最適化できるのは、レコメンドしかありません。
僕達がどんなサービスを作っていきたいか。 繰り返しになりますが、「創作活動がもっと楽しくなる」ためのサービスです。
そのミッションを、今よりももっと多くの人に、もっと効率よく届けられるテクノロジーを見極め、そこに布石を打っていきたいと思っています。
例えば、コミュニケーションテクノロジーは、どんどん高速で、大容量で、リッチな方向に進化しています。 そのトレンドは、今後10年も変わることはありません。
その未来において、当たり前にあるものを作っていく。 僕達が3Dやライブ配信のテクノロジーに力を入れるのはまさにそのためです。
僕達はとてもユニークな会社で、僕達と同じミッションを掲げている会社は、世界でも他に無いかもしれません。
「創作活動がもっと楽しくなる場所」を10倍、100倍多くの人に届ける方法は、僕達が世界で一番深く考えていると言っても過言ではありません。
そんな世界を実現していくための開発体制として、エンジニアギルドと、テックリード体制というものを作りました。
エンジニアギルドは、エンジニア一人一人の10倍成長を後押しする体制です。
テックリード体制は、pixivが10年成長していくためのシステム設計を、全社に浸透させていくための体制です。
10倍成長、10年成長。
2つ合わせて、pixiv 10x10 です。 元ネタは、お近くのRubyistの方に聞いてください。
僕達が10年成長を掲げたのは今年に入ってからです。 それから、3年後を見据えた大方針を立て、全体に浸透させていく活動を始めました。
僕達の現状は、まだまだ理想的とは言えない部分もたくさんあります。 でも、僕達はそこまで悪くない立ち位置にいると思っていますし、限りなく理想に近づけていくことも難しくないと思っています。
ここにいらっしゃった皆さんも、どうかpixivの10年成長を応援していただけたらと思います。 本日はお越しいただきありがとうございました。