はじめまして、アートディレクターのichinohe(@ichinohe_dai)です。 普段はコミュニケーションデザインチームに所属してデザイナーをやってます。
今回は先日開催された『PIXIV TECH FES.』におけるコンセプトワーク、ロゴやノベルティ等のプロダクトデザインなど、皆様の目に触れる部分に関する想いや裏話について、ご紹介します。
コンセプト・イベント名について
今回初めてこのようなアートディレクションをするに当たって、まず海外の大きなセッションをいくつか映像で拝見したところ、テーマ性がしっかりしているイベントが大半だなという印象を受けました。 この体験を自分なりに表現できないかと思い、今回のディレクションを行っております。
前回カンファレンスを開催していたときは、「pixiv TECH SALON」という名前でしたが、「交流」をテーマにしていたため、このような名前をつけたと伺いました。 今回も「交流」自体に変更はなかったのですが、もっと多くの人に「声」を届けたいということで、バンドやアイドルの聖地でもある新宿BLAZEという舞台をお借りし、セッションを「歌」に見立てて、「フェス」として昇華させました。
日本国内のテックカンファレンスではあまり類を見ない形式で行うことによって、「ピクシブらしさ」を乗せたエンターテインメント性とピクシブが誇れる技術者達の「テクノロジー」を融合できたのではないかと思います。
LPについて
こちらの記事に詳しく載っておりますが、yui540さんの得意とするCSSアニメーションを盛り込み、技術的な面でのアプローチを多く取り入れました。そうすることで上でも述べたエンターテインメント性とテクノロジーを視覚的に感じていただけるものになっています。
ページデザイン自体は前回のLPデザインを踏襲しつつ、メインビジュアルの変更や、細部の調整を行いました。そこにアニメーションが加わることによって印象を大きく変えることができました。
グッズについて
フェスやライブ、バンドといった文脈をどのような形に落とし込んでいくかということで、まずサコッシュを作りました。 フェスの必需品(というイメージ)であり、この中に各文化からいろいろな物をフィーチャーし袋につめました。 バックステージパスのような布ステッカー、フライヤー、サイリウムなど。 また会場で配られるドリンクのカップも特注して、イベントらしさを際立たせました。 グッズの紹介コーナーと称してメニューを模した物販コーナーを作り、登壇者専用Tシャツを開場0分で完売にするなどちょっとした遊び心を加えています。
前回好評だった名札も、今回の仕様に微調整し、作らせていただきました。 名札は手作業で作っていたので、必要以上に手間と時間がかかってしまい、ふたを開けてみると一番苦労したグッズだったかもしれません。スクリプトを組むなど次回への反省点は残りますが、結果として喜んでもらえたので私は幸せです。
装飾からグッズまでの全てのクリエイティブを統一感を持って制作することにより、唯一無二のイベントになったのではないかなと思います。
キャッチコピーについて
「BE CREATIVE」、クリエイティブであれ、という言葉ですが、社員が一丸となってクリエイティブでありたいという気持ちの表れとしてこの文言を掲げ、やらせていただきました。 しかし、プロジェクトの始動当初は、イベントに向けたキャッチコピー、スローガンは決まってませんでした。 イベントを開催するに際し、コンセプトメイキング、ロゴやメインビジュアル、グッズ、イベント装飾など、様々なクリエイティブが作られていきます。
そうした制作を進めていくうちに、何のために登壇するのか、何を伝えたいのか、というのをそれぞれのクリエイティブの中で伝えられないものかと、ふと思いました。
そんな中、とある海外のイベントで登壇者が自分の伝えたいメッセージをTシャツにして着ていたの思い出しました。
もちろん、分かりやすくロゴドーン!なTシャツをユニフォームにするのも素敵だと思います。 しかし、メンバー全員が掲げた信念の元にステージに立っているほうが、登壇者、いやパフォーマーとして正しいのではないかと思い、関係者に相談し、核となるキャッチコピーが必要なのでは、という解に至りました。
考える過程で、本来何を伝えたかったのか、端的に自分たちらしさを伝える言葉は何なのか、というのを皆で擦り合わせることができました。 とてもじゃないですが、記事に載せられないような狂った案から、尖った案まで沢山の候補があがりました。そうした議論の末たどり着いた言葉が「BE CREATIVE」になります。 その結果、イベントに向けての士気が上がり、関係者一同の足並みをそろえるキッカケにもなりました。
当日の催しの一つとして「■■■■ BE CREATIVE」というステッカーを作り、ホワイトボードに各々の名前とクリエイティブで誇れることを書いていただきました。 この体験によって今回のBE CREATIVEという言葉の魅力や意図を少しでも身近に感じていただけたのではないかと思っております。
KEYNOTE SESSIONについて
今回のイベントの花形である、KEYNOTEですが、こちらも監修させていただきました。 冒頭でも触れましたが、海外のカンファレンスはテーマ性のしっかりしたセッションが多く、KEYNOTEもデザインガイドラインによってフォーマットが統一されていました。 それに対して、国内のカンファレンスでは、登壇者本人が自由に作った個性の強いものが多いです。これらは見ていて面白く、飽きもなく楽しいのですが、敢えてそういったものではなく、海外のような統一感のあるものを心掛けました。
今回のKEYNOTEは使用する日本語・英語フォントや文字サイズ、レイアウトのルール等のガイドラインを私が作り、CTOのharukasanさんのご協力のもと、アニメーションや、見ていて飽きないモーションなどのユーモアを追加していただきました。
内容を詰めていく際には、登壇者に作っていただいた原本を、ガイドラインに当てはめて形にすることで、各々の個性を殺さず、全体を通して統一感のあるデザインになりました。
ただこのKEYNOTEのデザインですが、会場の設備の都合上、細かい図や、細かな文字を表示することができないかもしれないという問題点がありました。 問題点を踏まえて、極力図を減らす、可能な限り文字を大きくする、端的に物事が伝えられるようなデザインにする等の対策をしております。 ライブハウス、かつプロジェクターを利用するシチュエーションだからこそ、このようなアプローチをしなければならなかったのですが、そこはLEDモニターを導入するなど、過去のBLAZEで行われていたライブイベントから学び、こういうやり方があったな、と後々思うところもありました。
SHORT SESSIONについて
せっかくKEYNOTEがコンセプティブな作りになっているのに、ただのショートセッションでは面白くないよね、というような会話から、当初の予定を破壊して乗っ取るようなカタチを演出することでエンターテインメント性を全面に押し出しました。
爽やかなOPから始まり、パンチのきいた司会で盛り上げ、強めの煽り文句から登壇し、ショートセッションの内容自体はめちゃくちゃ真面目で、思わずツッコミしてしまう、そんな娯楽に振り切ったものとなりました。
こちらのショートセッションの詳細に関しては後日insideが公開される予定ですので、楽しみにお待ちください。
OP映像/音楽について
「テック」や「フェス」という言葉から連想されるものを大きく解釈してクラブサウンドに焦点を当てました。 それを踏まえ、今回OP映像はmurAta Yuziさん、音楽をDJ Norikenさんにお願いいたしました。 お二人はクラブイベントのジングルを一緒に制作していたのもあり、イベントに華やかさが出ると確信を持ってご依頼させていただきました。 「テクノロジー」とテーマカラーとイベントの趣旨をお伝えして作っていただいた映像や音楽はどれもイベントのイメージ通りの素敵なモノでした。この場を借りて感謝を申し上げられればと思います。
murAta Yuzi
- behance - https://www.behance.net/m_yz
DJ Noriken
- twitter - https://twitter.com/noriken
また、他にも全体的なイベントの中で、映像がたくさん使われました。 KEYNOTEの登壇者登場時の映像や、ショートセッションの使われた映像、OPはhanakenさん、matsuraiさんに担当していただきました。 当日のDJパートで行われていたVJも担当していただいております。ここでしか見られないような映像も多々ありました。 それぞれのパートにおける方向性をしっかりと汲み取っていただいて、最高のイベントになるには必要不可欠な存在でした。一緒にモノづくりができたことを光栄に思います。
それ以外にもショートセッションで使われた音楽に関しては、雄之助さんからご提供いただきました。素晴らしい楽曲をありがとうございました。
雄之助
- twitter - https://twitter.com/bass_ynk
さいごに
今回のアートディレクションを通じて、たくさんのことを学ばされました。 プレイヤーに徹してきた自分ですが、もっと全体を見通して動かなければならないのだと強く考えさせられました。しかし、プレイヤーだからこそできたこともたくさんあるので、両方の視点を失わないよう、今後も心掛けていくつもりです。
また今回のイベントのように、来場者の皆様、記事やツイッターを見て興味を持っていただいた皆様に五感全てで楽しんでもらえるようなディレクションをやっていきますので、これからもピクシブが行うイベントをお楽しみにいただけると嬉しいです!
駆け出しアートディレクターのichinoheでした!