ゲーム内で好きな3Dキャラクターを利用できるシステムを組み込んだ、お絵描きアドベンチャーゲーム「パスパルトゥー2:あるアーティストのキセキ」。4月の発売以降、配信に3Dキャラクターを利用しているVTuberの方はもちろん、多くの方から「自分のアバターでパスパルトゥーをプレイできる!」とご好評をいただいています。
今回は、Flamebait GamesのCTOであるNiklas Bergwallさん、アニメーター・UI/UXデザイナーのNiklas Lindbladさんにお話を伺い、共同開発に踏み切ったきっかけから「自分のアバターで遊べるアドベンチャーゲーム」実現までの道のりをまとめました。
成功のカギは世界観のギャップ?アートスタイルの違いで可能になった 「コンテンツのパーソナライズ化」
Ytomi (VRoid部プロダクトマネージャー):
今回はご一緒できて嬉しかったです。私たちにとってもチャレンジングな部分が多いプロジェクトだったかなと思います。ユーザーの体験、そして実装、その両面から振り返ることができればと思っています。まず、リリースしてから時間が経ちましたが、皆さんの反応はいかがだったでしょうか?
Niklas Bergwall:
パスパルトゥー2 では VRoid を使用しているコンテンツクリエイターをかなり多く見かけますし、XやDiscordサーバーでもVRoid のモデルを使用しているのを見かけます。ユーザーに積極的に使用してもらえており、本当に楽しんでもらえているように思います。
Ytomi:
XやDiscordでは、僕らが想像していなかったキャラクターの使い方もありましたね。嬉しいです。振り返ってみると、導入のお話が出たときはどのように思われましたか?
Niklas Bergwall:
VRoid Hubとの連携は、話を受けた当初から非常に魅力を感じました。パスパルトゥーはストリーマーやYoutuberに特に人気があるため、自分の3Dキャラクターをゲーム内で使用できる機能はとても需要のあるものだと思いました。
Ytomi:
実際にリリースされたときは、宝鐘マリンさんやレオス・ヴィンセントさん、大代真白さんを始め、多くのストリーマーの方にこの機能を楽しんでいただけましたね。
▼大代真白さん(あおぎり高校) YouTube www.youtube.com
Niklas Bergwall:
VRoid SDKの導入は、ゲーム体験にプラスの影響を与えたと確信しています。ユーザーが自分のキャラクターやお気に入りのキャラクターをゲーム内で使用できることにより、他の方法ではゲームに欠けていたであろうパーソナライズな要素がもたらされました。
Niklas Lindblad:
唯一懸念していたのは、VRoid Hub のモデルと、パスパルトゥーの世界自体に使用されているアートスタイルのテイストの不調和でしたが、キャラクターを「ゲーム世界へのビジター」としてとらえることで、アートスタイルの違いがむしろゲーム体験を向上させることに繋がったと思います。
Ytomi:
絵を描くという、プレイヤーの表現が画面に入り込む体験とも相性がよかったのかなと思いました。配信やSNSでシェアされた動画をみていても、オリジナルのプレイ画面を作り、そのシェアを楽しんでいただいている様子が見えましたね。
リリース後の反応としては、こと欧州において、VTuber以外のストリーマーの方も、好みのモデルをVRoid Hubから選んで配信してくださっていて驚きました。ひとつのカスタマイズ要素として楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
共同で取り組んだ開発
Ytomi:
それでは技術面について、今回はVRoid SDKの組み込みに加えて、ゲーム用にキャラクターへのアイテム付与などを行いました。SDKの組み込みに関して、困った点はありましたか?
Niklas Lindblad:
最も大変だったのは、スケジュールのプレッシャーでした。リリースに高い目標を設定したため、VRoid Hubの実装など、達成したいすべてのことにかなりの時間的なプレッシャーがありました。
VRoid SDKには、いざという時に役立つサンプル実装が付属していますが、このサンプルにはクロスプラットフォームに関する懸念がいくつかありました。そこで、独自の実装を行うことにしました。このプロセスは非常に簡単で、pixivチームは API に関して混乱が生じた場合に支援し、VRoisHubで利用可能なすべてのモデルがゲーム内で適切に表示されることを確認するのにも役立ちました。
Ytomi:
VRoidチームのエンジニアともうまくコミュニケーションを取っていただきました。VRoidチームとしても、いくつかチャレンジングなプロジェクトでした。
VRoid部エンジニア:
プロトタイプとしてまずパスパルトゥーをVRoidSDKを通して変換して操作できるデモを作るところから始めました。SDKにはサンプルプロジェクトが含まれており、これが非常に使いやすく、短期間でのデモ作成が可能になりました。
課題だった点はNiklas Lindbladさんがおっしゃっているように「アートスタイルのテイストの不調和」への対応。スタイルの違いを許容できる範囲とそうでない範囲があり、例えばSSAOと呼ばれる影を協調するポストエフェクト表現がパスパルトゥーに存在しますが、トゥーンスタイルの多いVRMには適さないことが多い為、VRMにだけSSAOを適応しない処理が必要でした。幸いにもURP環境であった為、デモ版ではこれはRenderer Feature機能を使って解決しました。
こういった問題は実際に組み込んでみてからでないと分からない問題であり、今後のSDK開発に必要な機能として参考になる点が多かったです。
Ytomi:
こういった取り組みはSDKの機能としてはもちろん、サンプル実装としても公開していけるとよいなと考えています。先日はUnityアプリケーションだけではなく、Webアプリケーションでも連携を行うための実装例を公開しました。開発者登録のハードルを下げるのとあわせて、様々なジャンルでのサンプルを出していきたいですね。
VRoid部エンジニア:
現状のSDKサンプルはVRMアバターを呼び出すのみの最小限のプロジェクトになっており、これは既存のアプリやゲームの組み込みにはとても適している反面、一からSDKを使ってアプリやゲームを作りたい場合には全体像がイメージしにくい問題というがあります。
例えばSDKを使ったFPS、TPS、マルチプレイゲームといった、より具体的なサンプルプロジェクトがあると、導入の難易度がより下がって良いのかなと感じました。
Ytomi:
それでは最後に、Niklasさん、今後VRoid SDK連携を考えている開発者の方にメッセージをいただけますでしょうか。
Niklas Lindblad:
VRoid SDKを導入することで、既存のVRoid Hub ユーザーの参入障壁を完全に取り除くことができます。ユーザーはさまざまな3Dキャラクターをゲーム内で使用できるようになり、ゲーム体験にオリジナリティを出したり、自分のモデルを使用してコンテンツをブランド化したりすることができます。
特に VTuber などのコンテンツクリエーターにとっては、自分のモデルを使用することで、視聴者とともにリアルタイムでゲームの世界に入り込めるという魅力があります。
Ytomi:
ありがとうございました!
VTuberの方はもちろん、今回の連携では多くのプレイヤーがゲームのカスタマイズ要素としてVRoid Hubにある様々なキャラクターで遊ぶ体験を楽しんでくださっていましたね。カスタマイズの結果、面白い画面を作ってSNSにスクリーンショットを共有したり、配信上の話題にしてくださったりと、ゲームの広がりに少しでも貢献できていたのなら嬉しいです。
VRoid Projectは、自分の3Dキャラクターでできる遊びの幅を広げていきたいと考えています。Unity、 Unreal Engine、 Webといった複数の環境に向けたパッケージ提供を行っており、今後サンプルの拡充等も予定しております。公式HPにて、すぐに利用できるようになっていますので、ぜひお試しください!お問い合わせもお待ちしております。
今後ともVRoid SDKをよろしくお願いいたします。
▼VRoid SDKの利用はこちら hub.vroid.com
▼問い合わせはこちら www.pixiv.net