2017年9月9日に開催したpixiv10周年記念イベント「pixiv MEETUP -10th Anniversary-」。本イベントではCEOやCTO、エンジニア、プロダクトマネージャーなど様々な立場のメンバーが、これまでどのように考え、どのようにチャレンジしてきたのか技術的知見を交えながら発表を行いました。
4つ目のセッション「エンジニアの働き方 - クリエイターファーストなエンジニアカルチャー」では、CTOの高山温と開発本部長の小芝敏明がパネラーとして登壇。エンジニアリングマネージャーの川田寛がモデレーターを務め、ピクシブのエンジニアカルチャーについて話しました。
開発体制と現場の雰囲気
私はクリエイターの活動を支援したいという思いから転職活動を始めて、そこでピクシブに出会い、2015年にジョインしたんですが、入社してみて驚いたことがあるんです。
エンジニアの方だと共感できることだと思いますが、エンジニアは技術に集中したい人、そもそもユーザーや事業に関心がないという人も少なくないはずです。また、崇高な企業ミッションを掲げて採用ページに掲載してても、社内ではその存在が知られてなかったり、社員に全く浸透してないってことは往々にしてよくあることです。
しかし、ピクシブは「創作活動をもっと楽しく」という企業ミッションに、みんな何かしらの想いがありまして。エンジニアもクリエイターファーストという理念に基づいてコード書いてるようなカルチャーで、そこに感激したんです。そういうカルチャーがどう醸成されたのか、お二人にお話を聞きたいと思います。
小芝:まず、ピクシブは全部で150人ほどの社員がいて、その3分の2がサービス開発に携わっています。各プロダクトでチームを組んでディレクション、開発、サポートなども行っています。組織図を書くと、横にずらっとチームが並ぶ感じです。
高山:開発は5~10人くらいで1チームを維持しており、エンジニアがチームの8割くらいを占める場合が多いですね。エンジニアやデザイナーなど手を動かしてものを作ることができる人がサービスを考えて作ることを大事にしており、このような構成にしています。
小芝:タスクだけ割り当てられてガリガリやるという人を入れたくないので、自分たちで上から下まで自分たちで考えて動いて手を動かすという構成ですね。
高山:そうです。1チームは少ないのですが、チームごとの交流がいっぱいあって、隣が何をやっているのかみえて、会社全体の風通しがいい。そこは狙ってそうなるように、コストやリソースをかけてやっています。
例えば、毎週、開発メンバーを集めてプロダクト会議というのを開催しています。そこにはチームごとにメンバーを出してもらい、「自分たちのプロダクトはこう考えてこうやっています」といった話をしてもらいます。会社で起こっていることを、全員が自分のことのように考えられるというのを大切にしています。「そんなに時間をかけてやることか?」と思われがちですが、それこそがいいんだと頑なに続けています。
小芝:基本的にプロダクトで使うものはチームごとに開発していますが、「こういうものを使いました」という紹介や、技術面でチームを越えてアイデアを出し合うなど、横串の活動も増えています。チームを小さくするためには、そういう工夫も必要ですよね。
新しいプロダクトが生まれる時、エンジニアはどのようにアサインされていくのでしょうか?
高山:最初に「グロースチーム」(新規会員登録数やプレミアム会員数、広告収益を伸ばすことを目的に、2012年1月頃に発足したチーム)が出来たときに、エンジニアが0人だったんです。当時pixivの開発チームリーダーをしていましたが、そこにはエンジニアも必要だろうと手を挙げ、一人で飛び込んで立ち上げに加わりました。
2012年に社内で漫画に対する気運が高まったときにはプロジェクト計画を作り、「pixivコミック」の開発責任者になりました。最近では福岡オフィスを立ち上げて新事業をやり始め、福岡に開発チームを発足し、福岡オフィスの採用からプロダクト開発まで行っています。
当時、高山さんはエンジニアなのに、企画もやられていたんですか?
高山:ピクシブでは社内でプロジェクトが立ち上がるときは“やりたい人ベース”で、「やりたいです!」という人が物事を動かす権限を与えられることが結構多いんです。僕はたまたまエンジニアでしたが、そういうことに興味があり、いろいろとやっていくうちにずっと新しいことをやり続けてきたという感じですね。
小芝:僕は最近で一番思い出深かったのが、マストドン(オープンソースSNS)インスタンスの「Pawoo」が立ち上がったときです。これは鮮烈で、すごくエクストリームな始まり方でした。立ち上がったのは2017年4月14日の金曜日でしたが、前日の夜19時過ぎくらいに清水(pixiv Sketch・Pawooプロダクトマネージャーの清水智雄)が、「マストドンやろう!」と言い出して、インフラのマネージャーである店本(執行役員の店本哲也)に声をかけました。「店本さん、Mastodonやりましょう」といってあれこれ話をしてから伊藤社長に話して、「じゃあやろう」となって翌日からスタートしたんです。
その日中にローンチするのをファーストプライオリティにして、実際に立ち上げました。さすがにこういうのがスタンダードとは言わないですが、ピクシブらしいエクストリームのパターンかなと思います。
オーナーシップ
そうした立ち上げ方は、エンジニアが事業にコミットして全員がオーナーシップ(※)を持っているからできたことだと思います。「俺は技術的なことだけやっていればいい」という考えだったら、事業でどういう動きがあるか関心がなかったはずです。みんながオーナーシップを持っていたからこそできたことだと思います。
小芝:先ほどのセッションで、清水が「プロダクトづくりにはエンジニアの分かり手力が必要」と話していました。コンテキストへの理解を高め、2を言うだけで10のことを把握し実装していける力。この「分かり手力」というのは「オーナーシップ感」だと思います。
自分が携わっている事業にはそりゃあ愛着がありますが、自分が携わっていない新しい事業にも、すぐ自分のこととして考えて突っ込んでいけるというのがオーナーシップだと思います。これがあるから、ピクシブは支えられているのだと思っています。このオーナーシップというのは、 自分の仕事を「自分自身の課題」ととらえ、主体的に取り組む姿勢のこととして理解しています。
高山:そうですね。先ほどプロダクト会議の話をしましたが、そういうところで会社全部の事業に対する自分のオーナーシップを高めています。1つのチームの人数を少なくして、それぞれがプロジェクトに対して発言力が高い状態を維持する。そういうのを会社がやっているからこそ、うまく行っているのかなと思います。
全員が高いオーナーシップを持つのは、いいところと悪いところがあると思うのですが、いかがでしょうか。
高山:尊敬できる人、信頼できる人がやっていることだから耳を傾けてみよう、信頼してみよう。一緒にやったら楽しいじゃんと。離職率も低くて、そういういいところがありますね。
小芝:それぞれの趣味の活動は全然違うのですが、それぞれが受容しあっている居心地の良さがあります。ただ思い入れの強さは意見がぶつかることもあり、方向性を決めるときにじっくり議論が必要です。例えば清水のようなオピニオンリーダーの言葉であっても、メンバー本人が納得しないと、てこでも動かないです。そのあたりのスピード感は“超絶独裁者”がいて「従え!」というところよりも、ときには遅いこともあります。
高山:クリエイターファーストなどの理念に共感して一緒に働きたいと思っている人がピクシブに入ってくるので、その思いがない人は技術力が高くても最終的に引っ張れないという難しさはあります。
技術力が高いだけで採用できるわけじゃないということですね。
小芝:実際に背中を任せられるか。二次面接とか、現場メンバーが見極めるところでそういうことが起きるのですが、それは大事なことなので今後も続けていきたいと強く思っています。
オーナーシップを作る組織作り
どうやったらエンジニアみんなに企業ミッションを浸透させたり、オーナーシップを持たせられたりするようになるのでしょうか。
高山:クリエイターファーストに共感してみんなが入ってきて、お互いに尊敬して働いているのが分かっています。尊敬している人がやっているのだから、どんどんやらせる。小さな失敗を繰り返すことで、引き返せずにどんどんチャレンジしていけるので、自然とできている感じですね。
小芝:組織も人も増えてきましたが、そこでさらにチャレンジの打率を上げることが大事です。うまいこといったらもう一発……と思えるので、みんながもっともっとチャレンジしていけるようにと考えています。
もう1つは小さなチームを維持しながら、自分たちの役割に関係なくいろいろなことをするというのを引き続きやっていくといいと思います。例えば採用もできる限り各チームが自分たちでやろうと思った方がいいし、チームでイベントを出展するとか、プロモーションを行うとか、ユーザーインタビューしますとか。そういったことをほかの専門家に任せるのではなく、専門家の力を借りつつも自分たちが主体でやっていくというのをどんどん進めていきたいですね。
pixiv MEETUPアフターパーティ
「pixiv MEETUP -10th Anniversary-」では、6つのセッションからpixiv10年間の軌跡をお話しさせていただきました。
セッション後には、同会場でアフターパーティも行われ、日頃お世話になっているクライアント様や学生エンジニアなど600名近い方にお越しいただき、大盛況の中、pixiv10周年イベントを終えることができました。
会場にお越しいただいた皆様、ありがとうございました!
アフターパーティでは、キリンビール株式会社さんのご協賛で「グランドキリン」をいただきました。キリンビール株式会社さん、ありがとうございます!
このイベントを通して、pixivはこの10年間、数多くのユーザーと開発運営メンバーに支えられ、ここまで成長することができたことを改めて感じました。
これからも数々のことに挑戦していきますので、今後ともピクシブをよろしくお願いいたします!
そしてピクシブでは、これからより輝かしい未来を作るために一緒にサービスを盛り上げてくれるメンバーを募集しています。
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