デザイナーのsakamocchiと申します。 pixivではプレミアムサービスを担当、その他サービスではマンガアプリのUI/UXの設計、ビジュアル作成などを担当しております。 また、pixivのインタビューチームとしてユーザー調査もやっており、今回はユーザーインタビューについてそのやり方や知見などをまとめたいと思います。
目次
- ユーザーインタビューの目的を決める
- 対象者の選定
- インタビューの質問項目の作成
- 同意書・謝礼等の準備
- インタビューの実施
- インタビューの振り返り・記録
ユーザーインタビューの目的を決める
まず、インタビューを実施するにあたって当然なのですが目的をしっかり決めておきます。 そうしないとインタビューの質問項目も作りづらくなりますし、実施したときの内容も曖昧なものになってしまいます。
目的とは例えば、
- 新規サービスや新機能開発で、想定するニーズがあるかどうかを探る
- 特定の年代・性別で使われていない理由を探る
- 解約率が高い理由を探る
- ペルソナの新規作成・更新をする
などのようなものです。
また、目的を決めたら、改めて「これはユーザーへのインタビューでないと探れないものなのか?」を考えると良いですね。 データから仮説を出して、アンケートで聞くだけで済んだり、ユーザー兼社員へのヒアリングで十分だったりする場合があります。
ユーザーインタビューはコストが大きくかかるものなので、本当に必要かどうかを常に念頭に置くと良いと思います。
対象者の選定
ターゲット群の定義
目的が決まったら、次はその目的をもとに仮説をたてて、ざっくりとターゲット群を定義します。
たとえば、「新規サービスや新機能開発で、想定するニーズがあるかどうかを探る」というのが目的だとしたら、そのサービスや機能を使う人というのはどういう人だろう?というのがある程度予想できると思います。
その予想をもとに、ターゲットになり得そうなユーザーについて以下のような基本的な属性で目星をつけていきます。
- 性別
- 年代
- 職業
- 居住地
- 抱えている不満・不便
- 解決したい課題 などなど
これらの目星がついたら、次にターゲット群を抽出します。
ターゲット群の抽出
ターゲット群の抽出には、以下2つの場合があります。
- 抽出に使えるデータが自社にある場合
- 抽出に使えるデータが自社にない場合
「抽出に使える」とは、目星をつけられるようなデータのことで、たとえばユーザーが公開しているプロフィール情報や、アカウント登録時の情報のことを指します。
1の場合は、基本的にデータベースなどから情報をとってくれば良いので、2について書きます。
2. 抽出に使えるデータが自社にない場合
この場合、pixivではアンケートを行うことが多いです。 また、これもさらに2つの場合に分けられます。
- (1)ターゲット群が自社サービス内のユーザー群とかぶっている場合
- (2)ターゲット群が自社サービス内のユーザー群とかぶっていない・少ない場合
それぞれの場合について書いていきます。
(1)ターゲット群が自社サービス内のユーザー群とかぶっている場合
以下の方法で表示・誘導します。
- サービスのTOP画面(Web・アプリなど)にアンケートを表示する
- サービスの画面内にアンケートへ遷移させるためのバナー等を置いて、移動してもらう
- メッセージやメールでアンケートのお知らせ・誘導を行う
アンケートツールはいくつかありますが、弊社では主に有料のアンケートツール「Qualaroo」か、無料のGoogleフォームを利用しています。
それぞれの特徴と使い分けは以下です。
Qualaroo
- pixivのトップ画面に表示できる
- 基本的にはPC/スマホのブラウザ版のユーザーが対象
- ユーザーのIDと紐づけたり、出し分けができる
- 回答率が高いので、早くたくさん集めたいときに利用する
Googleフォーム
- PC/スマホ以外のユーザー(アプリなど)からも回答を集めたいときに使う
- 回答率がサービスの画面に表示するより低くなるので、送信の母数を多くする必要がある
ここで注意点として、アンケートに答えてくれる方は、「自社プロダクトに親しみを感じてくれている熱量高めのユーザー」かつ「アクティブユーザー」であることが多いです。
なので、たとえば週の訪問日数が少ないユーザーに話を聞きたいとなった場合は、そもそもアンケートで獲得できないか、獲得できても数が極端に少ない可能性があります。
このケースはpixivでも困っているのですが、アンケートの母数を増やすか、以下の「ターゲット群が自社サービス内のユーザー群とかぶっていない・少ない場合」の方法で対応しています。
ターゲット群が自社サービス内のユーザー群とかぶっていない・少ない場合
この場合は、以下の方法が考えられます。
- 知り合いやSNSを頼りに探す・呼びかける
- 調査会社を利用してターゲット群にアンケートをとる
調査会社を利用する場合は、インタビューの依頼が可能かどうかを事前に確認しておく必要がありますね。
インタビューの質問項目の作成
質問項目は目的から組み立てていくので、目的によって大きく変わります。 以下は知りたいことと質問例です。
- 想定するニーズがあるかどうか
- そのニーズにまつわる行動や不満点等
- そのニーズに関する機能の実装を想定し、狩野モデルで質問する
- http://sugiim.hatenablog.com/entry/2013/04/15/110321
- 特定の年代・性別で使われていない理由
- 競合サービスがあるかどうか
- 可処分時間について(平日・休日のよくある1日の行動)
- 財務状況まわりについて(利用している有料サービス、消費活動など)
- ペルソナの新規作成・更新をしたい
- サービスを使うタイミングや動機・行動(サービス利用のカスタマージャーニーマップをつくるイメージ)
- サービスを利用していて嬉しかったこと・不満点
基本的には、用意した項目を次々に質問していくことはせず、得た回答をもとに深堀りしていきます。
このとき、もし時系列順で聞けるのであれば、そちらの方が望ましいです。時系列順だとユーザーさんが順を追って思い出しやすく、答えやすいためです。 たとえば、きっかけをたずねて、「○○という理由で」と返ってきても、それだけでは不十分な答えだったりします。「その前にどういうことがあったか?どういう行動をしたのか?」と質問を重ねると、十分な答えを得やすいです。
他に気をつけていることとしては、感情や理由は単独では質問しないということです。時間がたつと過去に感じたこととは違う認識になる可能性があるためです。 なので感情や理由を聞きたいときは、「○○の行動をした結果 or ○○の出来事が起こった結果」どう思ったか、なぜそうしたのか、という風に聞くようにしています。
同意書・謝礼等の準備
インタビュー実施の前に準備するものは以下の通りです。
- インタビューの同意書を2部
- ユーザーさんに署名をしていただき、1枚は控えとしてお渡しし、もう1枚は社内で保管
- インタビューを記録するためのテンプレート
- インタビューの内容に応じた謝礼
- クーポン券やグッズなどのお土産があれば
- お菓子や飲み物
- ボイスレコーダーが必要であれば
- インタビュー場所
- センシティブな内容になるなら、個室を確保
インタビュアーについてですが、センシティブな内容にふれる場合は、できるだけ同性にしています。異性だと話しづらく、きちんと回答を得られない場合があるためです。
インタビューの依頼・実施
以下一連の流れです。
- メールやサービス内通知でインタビュー依頼のメッセージを送る
- 承諾してくれた方との日程調整
- インタビューについての説明
- 謝礼があれば渡す
- アイスブレイクとして10分ほど盛り上がりそうなことを話す。趣味や好きなこと、ハマっているものなど。ユーザーさんとインタビュアーとの共通項があれば、盛り上がれるのでそれを探すと良いですね
- 質問項目をもとにインタビュー
- 引っかかった点、重要だと思った点があればそこを重点的に質問する
- お土産を渡す
- お見送り
- 忘れないうちに重要な点や気づいたことなどをメモする
- 質問内容の精査
- 次のインタビューで質問しておいた方がいいことがあれば付け足す
- 逆に不要な質問があれば消しておく
以下、インタビュー時に気をつけていることです。
- 沈黙が訪れても、無理に促したり自分から話すことはしない。話してもらえるまで待つ
- ただし沈黙が多ければ、話しづらいことや気になることがある可能性があるので、それについてたずねる
- 理解がしづらい質問については例をつける。ただ挙げすぎると誘導してしまう場合もあるので気をつける
インタビューの振り返り・記録
最後にインタビューが終わったあとで、振り返りや記録を行います。
- インタビューの内容をKJ法や上位下位分析等で分類
- インタビューの目的を達成しているかどうかを判断
- 達成していなければ追加のインタビューなどを検討
- 達成していれば、今回行ったインタビューについてまとめる
- インタビューの目的と内容についての要旨
- ターゲットユーザー群について
- アンケートの回答率
- インタビューの受諾率
参考:
- KJ法
- 上位下位分析
※弊社では上位下位分析をシュッと短時間でまとめたいときはスプレッドシートを利用しています。
これらを資料としてまとめておくと、次にインタビューをするときの参考として役立ちます。
以上、インタビューについてのまとめでした。 この記事がお役に立てると幸いです。
また、ユーザー調査をやりたいデザイナーの方がいましたら、一度pixivへ遊びに来てみませんか? ぜひお待ちしております!