初めまして、kaniです。
普段はエデュケーション部教育開発チームのリーダーとして、システム開発に従事しています。
今回は、PIXIV DEV MEETUPのkeynoteセッションにおいて発表しました「京都芸術大学イラストレーションコースを支えるシステム開発」について、発表では省略した部分なども含めて書いていこうと思います。
ピクシブのエデュケーション部とは?
私の所属するエデュケーション部は、「教育事業」を通じて「創作活動を、もっと楽しくする。」チームです。ピクシブと京都芸術大学の提携事業である『京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース(以降、イラストレーションコース)』の開校に合わせて2021年に新設された事業部です。
京都芸術大学イラストレーションコースとは?
そんなエデュケーション部の主なプロダクトの一つが『京都芸術大学イラストレーションコース』です。
2021年に開校し、今年で4年目を迎えました。 入学者数は、延べ6,200名以上に上る日本最大級の通信制大学のコースです。
イラストレーションコースの特徴
- 完全オンラインでイラストを学べる
- 学費は年間約36万円(一般的な美術大学の5分の1程度)
- 卒業することで学士を取得することができる
また、学習体験にも力を入れており、以下の点が特徴となっています。
イラストレーションコースでの学習の特徴
- 「教員」としてプロのイラストレーターが所属し、イラストレーター本人が制作した授業からノウハウや知識を学ぶことができる。
- 制作した作品に対して実績のある教員から直接添削をもらえる。
- 教員と個別で話すことのできる「個別面談」を月100件近く実施しており、サポートも手厚い。
制作した課題に対して、教員から直接フィードバックをもらうことができます。
イラストレーションコースのシステム開発
イラストレーションコースは京都芸術大学とピクシブが連携した「イラストレーションコース研究室」によって運営されています。 私もその一員です。
イラストレーションコースの立ち上げにあたっては、京都芸術大学、ピクシブ双方に“はじめての挑戦”が多くありました。 京都芸術大学としては初の企業提携コースであり、ピクシブにとっても初めての高密度かつ長期の提携事業でした。
初年度入学者は予想の8倍、1600名
そうして生まれたイラストレーションコースですが、初年度の入学者は予想の8倍の1600名を記録します。
システムチームとしても『これだけの人数をどのように捌くのか?』ということが最大の課題になりました。
大きく課題になったのは「問い合わせ」と「作品評価」の二つでした。
問い合わせでは、回答状況を管理し、寄せられた問い合わせをコースの改善に繋げるための「カスタマーサポート」の仕組みが、作品評価では大量の作品を一定の基準で評価できる仕組みが求められました。
Google Workspaceを中心にしたシステム構築
システム構築に利用したのはGoogle Workspaceです。
GmailとGoogle Spreadshet、そしてGoogle App Scriptを活用することでオペレーションを構築しました。
問い合わせでは、メールを受信することで発火し、本文から学生の情報を抽出、スプレッドシートにまとめるスクリプトを作成しました。 カスタマーサポートに必要な担当者の割り振りや回答状況の管理はスプレッドシート上で行い、手動での更新としました。
(このシステムは、今ではZendeskというSaaSに以降し、運用は終了しています)
作品評価では、評価基準を統一するために、「配点」と「評価結果」を管理する2つのデータベースに加えて「採点作業するインターフェース」の3つをスプレッドシートで構築し、それぞれをGoogleAppScriptで繋ぎました。
これにより、作業時間の短縮、対応遅れの早期検知を実現し、2500件の課題を2週間で評価することができました。
評価システムを構築する上で大切にしていることは、できる限り細やかな調整ができるようにすることです。
エデュケーション部では、教員のフィードバックが学生に齟齬なく伝わるように、教材や評価の仕組みの細部までこだわっています。システムチームでは安易にSaaSに乗ってしまうことでそうしたこだわりが失われないように、上述のような技術選択を行っています。
こうして運用実績を積んだ上で、段階的にSaaSへ以降していくことで、適切な技術選択ができるようになっていると感じています。
エデュケーション部システムチームのこれから
京都芸術大学イラストレーションコースの開校から4年目を迎え、個別業務を最適化する中で、さまざまな知見が蓄積されました。 今後は、これらのデータを統合し、より情報技術的なアプローチで教育の開発を行なっていきます。
システムチームで大事にしていることは教育事業を推進するための「機会探索」と「効率化」です。
例えば、データ基盤の構築により、学生と教員のマッチングを最適化することで学習体験をより良いものにしたり、学生の興味関心を教材に反映したり、またコース運営の意思決定をデータを活用して支援するといった挑戦を行っていきたいと思っています。
エデュケーション部のMISSION・VISION
以上が、京都芸術大学イラストレーションコースにおけるシステム開発についてでした。 ピクシブのエデュケーション部は、「感応と創造の力を育む」というミッションの元、「表現が聞こえる。表現で語れる。」というビジョンを目指して日々事業を行っています。
このイラストは京都芸術大学イラストレーションコース卒業生のイラストレーター 安藤うり さんにエデュケーション部のビジョン「表現が聞こえる。表現で語れる。」を描いていただいたものです。
奥の学校から花が風に乗って広がり、動物たちの生活を彩るように、今後もエデュケーション部は「教育」を通じて「表現」が色々な人の生活を彩るような世界を目指してまいります。
安藤うりさんX:https://x.com/uri_illust
エデュケーション部の新しいプロダクト
エデュケーション部の二つ目のプロダクトとして、ZEN大学で「pixiv提携科目」の提供が始まります!
2025年開校の総合大学で、エデュケーション部ではpixiv提携科目を制作しています。今後の展開にご期待ください。