こんにちは、3Dビジネス室のkenomoです。
私たち3Dビジネス室は、3Dモデルクリエイターの創作活動を支援することをミッションとしたチームです。近年は、BOOTHの3Dモデルカテゴリの成長を加速させる取り組みや、VRChat社のパートナー企業として、VRChat関連施策の実施などを主に行っています。
はじめに
2025年の初めに公開された『BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2025』で述べられているように、2024年の3Dモデルの取扱高は58億円超となり、前年比約187%という驚異的な成長を遂げました。この成長の要因の一つとして、2024年夏以降のVRChat新規ユーザー増加によるコミュニティ全体の盛り上がりが挙げられるでしょう。

このような状況の中、2025年に入り、すでにVRChatに参入している企業やVRChatで活動するクリエイターの間で、新規ユーザーの動向に対する関心が一段と高まっているように感じます。実際にピクシブでも、新規ユーザー層へのアプローチを目的として、有名ストリーマーのk4senさんとBOOTHのコラボレーション配信企画を実施しました。
こうした新規ユーザー増加を目的とした施策を通じて、VRChatの魅力や可能性を再認識する一方で、乗り越えるべき多くの課題にも直面しています。
この記事では、私たち3Dビジネス室のこれまでの実践例を交えつつ、2025年4月に実施した「VRChatに関するアンケート回答&X投稿リポストで、pixivcobanが当たるキャンペーン」のアンケート回答の一部を公開しながら、これらの課題について考察します。
なお、この記事の内容はアンケート結果を基にした考察や所感であり、統計的な正確性を保証するものではない点にご留意ください。
回答者数と属性
2025年4月に実施したアンケートキャンペーンには、4,000名を超える多くの方々にご回答いただきました。この数字は、これまでピクシブで実施したVRChatユーザー向けキャンペーンや、社外の関連調査と比較しても、非常に大きな規模と言えます。

回答者のVRChat利用頻度は、「週に1回以上プレイする」方が90%以上、「ほぼ毎日プレイする」方が65%以上を占めており、日常的にVRChatを楽しまれているユーザーから多くの声が寄せられました。
また、初心者からベテランまで幅広い層の方々にご協力いただけたことがわかります。特筆すべきは、回答者の約半数が直近1年でVRChatを始めたユーザーであり、この1年間のユーザー増加の勢いを裏付ける結果となりました。
余談ですが、今回のアンケートでは、その他や自由記述の欄に非常に熱心なご意見を多数お寄せいただき、VRChatユーザーの皆様の熱量の高さを改めて感じました。
コミュニケーションは魅力的、でも最初は不安?
まず、コミュニケーションに関するアンケート項目の回答をご覧ください。

VRChatをプレイするうえで、「コミュニケーション」を最大の魅力として挙げる方が非常に多いことがわかります。その一方で、VRChatを始める前や始めた直後にかかわらず、多くのユーザーがコミュニケーションに関する不安を抱えており、それが大きな参入・継続の障壁となっているようです。
VRChatの認知を拡大するためには、従来から行われている動画配信やSNSでのプロモーションが有効であると考えられます。しかし、ユーザーに継続してプレイしてもらうためには、こうしたコミュニケーションの不安に対する解決策を提示する必要があります。
その点で、現在のVRChatで初心者歓迎のイベントや、コミュニケーションを促進するギミックが組み込まれたワールドが高い人気を集めていることは、非常に納得できます。その他にも、同じ時期にVRChatを始めたユーザー同士で集まる「同期会」のようなコミュニティも存在します。こうした参加のきっかけとなる取り組みを、さらに外部へアピールしていくことが有効かもしれません。
また、「VRChatを知ったきっかけ」として「友人や知人の紹介」を挙げる人が42.7%と非常に多く、「VRChatを始めようと思った決め手(単一回答)」でも同項目が19.2%で1位でした。 友人との参加は、コミュニケーションの不安を事前に解消する、理にかなった方法と言えるでしょう。ソーシャルゲームなどでよく見られる「友達紹介キャンペーン」のような施策も、検討の余地がありそうです。
VR機器とPCスペックの壁
次に、VR機器やPCスペックに関する項目の回答率を見てみましょう。

VRChatを始めるうえでの障壁として、VR機器やPCスペックを挙げる人が多く、これは既存プレイヤーから見ても、新規参入の大きなハードルだと認識されているようです。VR機器がなければプレイできないという誤解も一定数存在することがわかります。
VRChatはデスクトップモードでもプレイ可能であり、近年ではスタンドアロンVR機器単体での利用や、スマートフォン版など、プレイ手段は多様化しています。そのため、VRがなくても楽しめることは引き続き訴求していく必要がありそうです。
一方で、PCVR環境とその他の環境では、どうしても体験できるコンテンツの量や質に差が生じてしまうのも事実です。 高価なVR機器やPCを手に取ってもらえるような施策はもちろん、その他の環境でも楽しめるコンテンツの供給や情報発信は重要になってくるかもしれません。
情報収集における課題
続いて、情報収集に関する項目の回答率です。

VRChatの基本操作からアバターのアップロードといった技術的な情報まで、始めた当初に情報収集でつまずいた経験のある方が多いことがうかがえます。
こうした背景から、現在VRChatでは初心者向けのチュートリアルワールドが人気を博し、各種メディアでも初心者向けの記事が数多く公開されています。動画による情報発信も増加しており、以前に比べて情報収集の環境は改善されているようです。
とはいえ、テキストや画像を中心とした情報伝達には限界があり、覚えるべきことも多岐にわたります。さらに、VRChat内でしか得られない情報や、ウェブ上の情報も検索性・一覧性などに課題があり、経験者のサポートなしでは苦労する場面も少なくないでしょう。
今後は、各種情報への導線の改善や、テキスト・画像以外の伝達手段の模索、そして伝えるべき情報の整理・体系化など、さまざまな角度からのアプローチが求められます。 また、VRChatの導入をサポートする活動やビジネスの需要は、今後さらに高まっていく可能性があります。
リアルイベントの盛り上がり
近年、VRChatユーザーをターゲットにしたリアルイベントや即売会が増加しています。BOOTHも2025年4月に行われた「出張版!VRCくりえいてぃ部」に協賛・ブース出展し、多くのVRChatユーザーの方々と交流いたしました。
新規ユーザー増加というテーマからは少し外れますが、最後にリアルイベントに関するデータもご紹介します。
約半数のユーザーがリアルイベントに関心を持ち、4分の1が既に参加経験があることから、VRChatユーザーの間でリアルイベントが大きな盛り上がりを見せていると言えそうです。
参加理由として、グッズ購入やイベント内容への興味といった従来の動機はもちろんのこと、「VRChatフレンドとの交流(オフ会)」を目的とする人が最も多い点は、VRChatユーザーならではの特徴かもしれません。
今後イベントの開催を企画される方は、こうしたユーザーの需要を踏まえたイベント設計と、コンセプトの明確な伝達が重要になるでしょう。
おわりに
アンケート結果のほんの一部のご紹介でしたが、いかがでしたでしょうか。
すでにVRChatをプレイされている方にとっては、ご存知の情報も多かったかもしれませんが、VRChatをさらに盛り上げようと活動されている皆様にとって、この記事がご自身の活動や企画を再考するきっかけや、裏付けとなるデータとして、何かしらのお役に立てれば幸いです。
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