こんにちは、pixivコミックインディーズ・プロダクトマネージャー(以下PdM)のazumaです。
今回は弊社のプロダクトのひとつであるpixivコミックインディーズがこれまで辿ってきた軌跡と、私がPdMとしてジョインした後どんなことを考えどんな施策を行なってきたのかをご紹介します。
- pixivコミックインディーズってどんなプロダクト?
- ピクシブって、pixiv以外にもプロダクトがあるの?
- pixivのPdMってどんなことを考えて、どんな仕事をしているの?
などの疑問をお持ちの方に読んでいただければ幸いです!
pixivコミックインディーズってどんなサービス?
pixivコミックインディーズは、マンガ家デビューを目指すクリエイターとマンガ編集者がつながるサービスです。
2022年9月からβ版として運営しています。
クリエイターは、pixivに投稿した作品のうち編集者に見せたい作品や、自身のプロフィールやアピールポイントなどを掲載できます。
25誌以上、150名以上の編集者と提携しており、一緒に仕事がしたい!と思ったクリエイターと繋がることができます。
定期的に開催されるコンテストへの参加や、編集部を指定した持ち込みも可能です。
現時点では6000名以上の作家様にご参加いただいており、掲載作品数は3万件を超えています。
プロダクト立ち上げの背景には、次のような狙いがありました。
もともと、「pixivへの投稿をきっかけにマンガ家デビューする」という流れは存在していましたが、多くは水面下で行われており、可視化されていませんでした。
そこで、この構造を具体的なサービスとして可視化することで、
- 「マンガ家を目指す」作家たちが集まる場が生まれ、出版社にとっては次代のクリエイターを発掘しやすくなる(=出版社にとって嬉しい)
- 出版社が集まることで、クリエイターが自分に合う出版社と出会いやすくなり、「マンガ家になる」という夢がぐっと近づく(=クリエイターにとって嬉しい)
- 結果として、クリエイターにとって「pixivに投稿する」という選択肢がより有力になり、投稿数が増える(=弊社にとって嬉しい)
という、三者すべてにとって嬉しい好循環が生まれることを期待して発足したのがpixivコミックインディーズです。
デビュー作品
pixivコミックインディーズを3年弱運営してきて、たくさんの作家様の商業化を支援することができました。
連載化16作品、読み切り掲載7作品が生まれています。(2025年5月時点)
ここで一部をご紹介したいと思います。
- 『イケメン様でも青春したい!』(作者:あとろ先生)- ジーンピクシブ
- 『恋愛漫画 (仮)』(作者:松本支店先生)- ジーンピクシブ
- 『ヤンキーアシスタントの芦沢くんに恋をした 』(作者:あけび先生) - ガンガンpixiv
他にもたくさんの作品がpixivコミックインディーズから生まれているので、是非こちらからご確認ください!
ジョイン後に行った施策
私は2023年5月にPdMとしてジョインし、さまざまな施策を行ってきました。
この章では、私がその時々で何を考えどんな施策を行い、結果どうなったかをご紹介します。上手く行ったものもあれば、そうでなかったものもあります。
それを通じて「pixivのPdMがどんな仕事をしているか」の一部をお見せできればと思います。
1. 持ち込み機能のリリース
持ち込み機能とは、「クリエイターが編集部を指定して作品を投稿し、コメントを受け取る」ことができる機能です。
この機能は私がジョインする前からリリース予定が決まっており、要件定義・デザイン・仕様策定から関わることになりました。
この機能でどういうことがしたいのか社内関係者へのヒアリングから開始し、仕様書やテスト項目書を作成し、開発の進捗管理・QAまで行いました。
結果、持ち込み機能は(遅延はありつつも)無事にリリースでき、今日まで大きなトラブルは起きていません。
2. 開発フローの構築
私がジョインしたタイミングでちょうどエンジニアメンバーの異動があり開発フローが曖昧になっていたため、バックログの運用やアジャイルの方法についてエンジニアと密に連携を取りながらフローを固めていきました。
3. データの可視化と分析基盤の整備
2023年時点まで課題として、データドリブンの開発優先度の検討ができていないというものがありました。
具体的には、
- 計測できているデータが不完全
- 計測できている各数値も、数値間の関連性が検討されていない
- データを元にアクションを決める文化がチームに浸透していない
という課題がありました。
そこで、
- データわくわく会という会議体を立ち上げ、徐々にGA・Looker・BigQueryを用いたデータ計測基盤を整備しました。
- あまり厳しい雰囲気にしたくなかったので、会議の名前は緩くしました(笑)
- 各数値がどのような依存関係や影響を持っているか、ツリー構造で可視化しました。いわゆるKPIツリーに近いです。
- 開発アイテム毎に、それがどの指標を伸ばすことを目的としたものかを明確化し、データを元にアクションを決める文化を浸透させるように努力しました。
経験則・勘に頼った優先度付けから脱却し数値を元に行動を決められるようになったことで、かなり意味があったように思います。 メンバーの一人からも、「データわくわく会が、今年やって一番良かったことだと思った」との嬉しいお声を頂きました。
4. 作家行動の促進施策
この時のインディーズの問題点に、新規登録作家ユーザーの初回アクティベーション率が低いことがありました。
インディーズでは作家登録をしたらまず「作品の掲載」「プロフィールの記入」を行うのですが、この初回行動率がそれぞれ40.1%、25.5%とかなり低めになっていました。
そこでまず以下のように原因の仮説を立てました。
初回登録後のオンボーディングが不十分で、
①うまくユーザーを初回行動に誘導できておらず、
②プロフィール掲載をすることの価値をしっかり伝えられていない ことが原因かもしれない
そしてそれぞれに以下のように対策を取りました。
①ユーザーの初回行動を案内する機能、さらに離脱した場合にリマインドする機能を実装
②プロフィール掲載をすることで編集者はスカウトがしやすくなることを案内(実際に編集者へのインタビューからその事実がわかっていました)
これは自分でもちょっと驚くほどの効果があり、初回アクティベーション率は
- 25.5% → 60.4%
- 40.1% → 61.2%
と大幅に向上しました。
インディーズは、明確な目的(商業デビューする)があって登録するプロダクトではあるため、そこまで案内に力を入れなくてもユーザーが前のめりに行動してくれるという楽観も当初はあったのですが、UXの役割がいかに大きいのかを実感した事例になりました。
5. 作家獲得の施策
インディーズは何よりたくさんの作家様に登録してもらうことが肝心なため、様々な作家獲得施策を行なっています。
まず最初に考えたのはpixivからの導線です。
pixiv本体を利用している作家様は膨大な人数がいるため、このユーザーを呼び込めれば大きな効果が出るでしょう。 一方で、インディーズに興味がないユーザーにも無条件に表示されていたらノイズになってしまいます。
そこでpixiv本体を使っているユーザーのうち、インディーズと親和性が高いと思われるユーザーにのみ表示される導線を設計し表示するようにした所、CVR20%超えという高い効果をあげることができました。これはターゲティングが良かったのだろうと思っています。
次にトップページの改修を行いました。 元々のトップページはかなり簡素で、あまり魅力的ではないと考えたからです。
しかしこの施策はあまり上手くいかず、CVRはそれほど動きませんでした。 元々この改修は「どんな作品が投稿されているか見えないトップページから見えるものに変更する」ことが主眼だったのですが、ユーザーは他者の作品を知りたいとは特に思っていなかった可能性があると思っています。
今後もどんなコンテンツがトップページにあるべきなのかは探っていく必要があると考えています。
6. 編集者検索推進の施策
作家数を増やすと同時に、編集者の皆さんが常に活発に活動しているような環境作りも必要です。
編集者さんの「検索回数」をKPIに置きいくつかの施策を行っていますが、こちらについてはまだそれほど上手くいっていないのが現状です。
- 検索機能のUX改善
- 作家プロフィール記入項目の拡充
など、編集者目線で知りたい情報が効率的に知れるような改修を行いました。
また、これまで積極的に行われてこなかったCS活動を推進し、休眠状態の編集部にアクセスを促したり、より効率的な探し方を提案したりしてきました。
それぞれ、編集者さんから喜びの言葉をいただくこと(定性的成果)はあるのですが、数値としては大きくは伸びていません。
これは、そもそも編集部が新規の作家を探している時期とそうでもない時期の差が大きく、需要のムラの大きさが、活動による伸び率を上回ってしまっているため数値上の改善が見えなくなっている状態と考えています。
また、基本的に編集部には様々なチャネルから作家様を探したいという需要があるため、いくらインディーズが改善されたとしても他のチャネルも並行して使い続けるであろうことも関係しています。
ある程度以上は踏み込めない領域でもありますが、今後も編集部の方へのヒアリングを通じて必要な改修を行っていく予定です。
最後に
ここまで、pixivコミックインディーズ運営チームのこれまでの活動をご紹介してきました。
今後もpixivコミックインディーズでは、作家様と編集者様を繋げ新しいマンガを生み出すことに貢献していきます!
ピクシブでは、一緒に働く仲間を探しています。
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