2020年1月1日より、ピクシブ株式会社のCTO(最高技術責任者)が交代いたしました。 www.pixiv.co.jp
今回は、2016年12月よりCTOを担ってきた高山と、新しくCTOとなる道井に、今後の抱負などを伺いました。
まずは、お二人の自己紹介をお願いします。
高山 高山(@edvakf)です。ピクシブに入社したのは2012年3月で、CTOは2016年12月から3年ほど務めていました。
道井 このたびピクシブ株式会社CTOに就任しました、道井(@harukasan)です。2012年4月に新卒としてピクシブに入社しました
CTO引き継ぎの背景
早速ですが、CTO退任の背景を教えてください。
高山 ピクシブでは約8年働いたのですが、信頼してもらえてずっと大きな役割を任せてもらえました。ただ、長く務めているとどうしても居心地の良い環境に甘えてしまうところもあり、新しい場所でもっと自分の力を試したい、という気持ちがありました。
1年前に福岡から戻ってきた時に自分に課していたミッションは2つありまして、1つは自分よりも優秀な人にCTOを引き継ごうということと、もう1つは会社の長期戦略を実現していける最高の開発体制を作って引き継ごうということでした。なんとか最高に近い状態に持っていけたと思い、次に託すことにしました。
harukasanは新CTOの任命について、最初に聞いた時どんな気持ちになりましたか。
道井 edvakfさんがやめるタイミングはいつかどこかではくるので、ついにその時がきたんだなと思いました。ただ、その瞬間に自分がCTOになるとは想像していませんでした。
そうなんですね。お二人の付き合いは長かったのでしょうか。
高山 僕たちは、2012年にほぼ同じタイミングで入社しました。当時は社員が40人くらいでした。最初、僕はpixivのUIチームに、harukasanはインフラチームに配属されました。
当時会社が過渡期だったので、入社から約1ヶ月で開発リーダーを任されました。
道井 インフラチームは当時、僕を含め3人しかいませんでした。その状態が何年も続きました。
一緒に関わったプロジェクトはありましたか。
高山 一緒に仕事することは多かったですね。当時は、エンジニアの人数が少なかったのと、開発チームとインフラチームとの距離が近かったからだと思います。
道井 開発リーダーだったedvakfさんが、インフラに相談しにくる......みたいな感じでしたね。僕が作ったデプロイサーバーを、edvakfさんが一度作り直したこともありました。
印象的な仕事はありましたか。
高山 歯を食いしばったプロジェクトといえば、2人とも入社直後に関わったpixivコミックのリリースです。2012年4月にプロジェクト発足、6月にリリース、7-8月に運用フェーズ......と、3-4ヶ月しか開発期間がありませんでした。時間もそうですが、最初のプロジェクトで経験不足もきつかった理由の一つです。
道井 僕はpixivのインフラチームに所属しつつ、pixivコミックのサーバーもみていました。何回かサーバーが落ちたときは、旧社屋1に行って直していました。当時は毎週3、4回pixivも落ちていました。
高山 それから、ImageFluxは最初この2人で営業に行っていました。harukasanが、pixivの画像配信技術が売れるんじゃないかと言ったことをきっかけに経営会議にあがり、事業化することになりました。
当時はパートナーもいない中、3ヶ月くらい営業をしていました。さすがに限界を感じたので、そのあとさくらインターネットさんと一緒に仕事をするようになりました。
harukasanをCTOに抜擢した理由を教えてください。
高山 次のCTOは、さらにピクシブが次のフェーズにいくチャレンジをしてほしいと思っていました。自分より大きなチャレンジが出来る素質がある人がいないか見渡したら、ちょうどいい人がいました。
harukasanがこれまで色んなところで発表してきたことや語ってきたことには、ビジョンの壮大さがあるなと感じていました。例えば、ImageFluxをやりはじめたことです。この会社の可能性をかなり広げるようなプロジェクトです。harukasanは、他の誰からも出てこないことをやろうと言ってやりきる、責任をもってやれるという面があります。
これまでのCTO業務と今後
edvakfさんがCTOというキャリアを作るまでは、どのような流れがあったのでしょうか。
高山 先述の通り、pixivの開発リーダーを任されたところから始まっています。pixivコミックの立ち上げが落ち着いた頃に、自ら志願してグロースチーム(pixivのユーザーを増やすチーム)に参加させていただきました。
グロースチームの後も、僕は自分で作ったポジションを他の人に引き継ぐってことを何度もさせていただきました。pixivコミックのアプリを始めてみたり、あるときは福岡に行ってみたり。他の人と一緒に始めたプロジェクトでは決済基盤とかImageFluxもそうです。
そういうことをやっていたらCTOという大役を預かりまして、特にこの1年とかは経営者に近いところで仕事するっていう経験をかなりやらせていただきました。
CTOとしては、どんな業務をされてきましたか。
高山 会社全体を、技術的なシステムと人的なシステムを「10年20年と継続して成長する」という、会社の方針にあわせるような組織を設計しました。
やってきたこと2つ挙げると、会社全体のシステム設計をするための「テッククリード体制」と、採用育成評価を1つの思想に基づく仕組み「エンジニアギルド」を作りました。
その中でどんな苦労がありましたか。
高山 やると決めてからは結構すんなりで、やるだけでした。「テックリード体制」「エンジニアギルド」が最適なやり方なんだ、とそこにたどり着くまでが長かったです。
harukasanはedvakfさんの作り上げてきたものを引き継ぎ、今後どういうことをしていくのでしょうか。
道井 今やらないといけないことがたくさんあるので、そこを1つ1つどうやって潰していくかを考えています。やっぱり、社員数が200人を超えてきて、人数が増えてきて遅くなってきたことが結構あります。edvakfさんが「今200人だから、こういう組織を作ろう」というフェーズをやってくれたので、次は「組織を作るのが遅くなったところをどうしていくか」というフェーズに取り組んでいきます。
10年成長する技術戦略としては、継続的デリバリーを掲げています。継続的デリバリーとは、常に改善をリリースし続けるということです。例えば、2012年にpixivコミックをはじめたとき、Ruby on Rails 3.2で書かれていて、旧社屋に置かれたベニヤサーバーの上で動いていたんです。今考えるとありえないですよね。今ではRuby on Rails 5.2になり、大量のトラフィックにも耐えられるデータセンターのサーバーで動いています。世の中の当たり前の基準は常に変化していて、サービスが成長し続けるには改善し続けることしかないんです。
技術的な面では、大枠としての仕組みを導入しつつも、選択肢が少なくなるのはやりたくないと考えています。モニタリングであったり、認証であったり、会社全体で使える仕組みを用意していきたいと思っています。2013年にGoogle BigQueryを採用し、今ではピクシブの全てのサービスからデータが集まるデータレイクになりました。この選択は結果として非常に良かったと思います。こういった、いくつかの標準的な仕組みづくりをやっていきたいと考えています。
edvakfさんは、harukasanさんに向けて組織を引き継ぐ上でのコメントはありますか。
高山 僕は、経営のやりたいことを実現できる開発体制を作ってこれたと思っているので、それを踏襲して、ひずみが生じたらその時に変えれば良いのかなと思っています。
道井 基本的に、継続的に出し続けるしかないと思っています。この瞬間に何かを変えることはないです。継続的改善はこれまでの改善の延長にあると考えています。10年後にみたとき、あのとき大きく変わっていたと振り返られるように、頑張って走り続けるしかないと思っています。
ピクシブ社員や、今後入社される方に向けて
ピクシブ社員に向けて、メッセージをお願いします。
高山 3年ほど前、当時の片桐社長は冗談で「ピクシブは10年後ありません」と言っていました。そこから時代がかわって、「10年20年と続けていくことで文化をつくっていこう」と言われはじめたのが2019年の頭のことでした。ピクシブはそうなれる会社だと思いますし、そのためのCTOのチャンスにあふれていると思っています。これからもどんどん大きくなり、10年継続して成長していってくれると信じています。
道井 基本的にはコツコツ改善いくしかないと思っています。コツコツやっていけば、10年後には「10年前こんなんだったんだね」と言えるかと思います。今抱えている問題や、やるべきことがたくさんあるので、1つ1つ頑張って解決していきます。
それから、どうやって問題解決しやすい仕組みを作るかを考えていかないといけないと思っています。一人一人の改善速度をどれだけ上げられるかについて考えていきます。
これからピクシブで働きたいという方に向けて、メッセージをお願いします。
道井 今は非常にやりがいがあるフェーズです。例えば、日本だけではなくグローバルでたくさんのクリエイターがピクシブのサービスを利用しています。私たちは世界中のユーザーに「創作活動がもっと楽しくなる場所」を提供していかなければなりません。そのためにはやることがたくさんあり、おもしろいことがいっぱいあります
pixivの他にも、BOOTH、pixivFACTORY、pixivFANBOXなどクリエイターを支える様々なサービスを展開しています。これらのサービスをつなげてクリエイターを支えるエコシステムをつくっていきます。今までにないチャレンジができる環境だと思います。
ありがとうございました!
- 初期のpixivは、サーバーを自社運用していました。オフィスの一角に置いたメタルラックに、ベニヤ板を敷いて、むき出しのパーツを積み上げるというスタイルでした。現在はデータセンターを利用し、オフィスも新しい場所へと移転しています。inside.pixiv.blog↩